共同住宅(マンション、アパート等)が遺産に含まれていて、是非とも取得したい

共同住宅は、相続税評価の際に貸家建付地減価、貸家減価がなされますので、預金や金融商品を相続するより、相続税の面で有利です。

税理士さんが計算した申告書の評価額は時価より低額ですので、この点を他の相続人から指摘された場合は、素直に譲歩する必要があります。

評価については不動産業者に査定してもらうとよいのですが、査定する場合、不動産業者は依頼者に有利に高く査定したり、安く査定したりすることが可能です。

なお、通常の居住用不動産の場合は、路線価や公示価格から土地の値段を計算し、建物の固定資産評価額を足して、時価と考えます(積算価格と言います。)。

収益不動産について

収益不動産の場合は、積算価格に年間収益を期待利回りで割って、収益価格を計算し、積算価格も勘案して時価を計算します。不動産の有効利用できていない場合は、収益価格は安くなります。

しかし、賃借人に退去してもらって土地を売却すると高値で売れますので、積算価格と収益価格をどの程度勘案するかが問題となり、評価をめぐって対立が生じやすくなります。

この点、不動産業者の査定で合意できない場合は不動産鑑定士に鑑定評価書(「私的鑑定」といいます。)を作成してもらうことになりますが、それでも価格について合意できない場合は、最終的には、裁判所の選任した不動産鑑定士による鑑定をして、裁判所が決めることになります。

賃料については、被相続人の確定申告書に記載されていますが、遺産分割協議までに時間がかかっているケースでは最新の賃料を確認しておく必要があります。 

収益不動産については、被相続人が敷金を預かっており、収益不動産を相続すると敷金返還義務を承継することになるので、評価額から敷金の額の差引きをする必要があります。敷金は、債務として相続税申告書に記載されていますが、念のため賃貸借契約書で確認しておいたほうがよいでしょう。

収益不動産の賃料について

収益不動産の資料についても注意が必要です。実務では、収益不動産の賃料は遺産分割の問題ではなく、調停や審判で不動産が1人の相続人の単独所有になったとしても、相続開始後、遺産分割成立までに発生した賃料については、各相続人が法定相続割合で分割相続することになりますので、遺産分割協議に際しては、遺産分割協議成立までの賃料の精算について合意しておく必要があります。この点の合意をせずに、不動産の取得者しか決めていないと、他の相続人から、相続開始後、遺産分割成立までに発生した賃料の分配は遺産分割の問題とは別だということで、法定相続割合の賃料の支払の請求を受ける可能性があります。

なお、遺産分割協議で収益不動産を取得し、相続登記を完了したら、賃借人に対し、当該不動産を相続した事実と賃料の支払方法を通知して、賃料を受領することになります。

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