特別受益と寄与分

遺産分割協議や遺産分割調停、審判において、相続人からしばしばなされる主張として、特別受益と寄与分の問題があります。

特別受益について>>
寄与分について>>

他の相続人の特別受益、自分の寄与分の主張を裁判所に認めてもらうためには、きちんとした財産調査(特別受益の場合は特にお金の流れの調査)や根拠となる証拠資料の収集が非常に重要となります。この点、被相続人の日記や手帳などに、誰に・いくら渡したとの内容が書かれていても、それだけでは特定の相続人の特別受益を認める証拠としては弱いと思われます。そうすると、一般の方では対応が難しくなることが多いですので、お早めに弁護士にご相談・ご依頼されることをお勧めいたします。

弁護士にご依頼されると、以下のサポートを受けることが可能となります。

裁判官の視点に立って最終的に裁判所が出すであろう結論を想定し、そこから逆算して解決までの道筋を検討したうえで、交渉、調停、審判における戦略を立てる。
調停・審判を有利に進めるためには調停委員や裁判官を味方につける必要があるところ、説得的な主張書面による論証と適切な証拠に基づく立証を心がける。
特別受益や寄与分を立証するための的確な証拠資料の収集・提出をする。

特別受益や寄与分の主張をする場合、これらに該当するか否か、該当するとして、どの範囲・金額で認められるかによって、遺産分割協議や調停・審判の結果に大きな影響を与えることから、そのような場合は弁護士にご依頼されることをお勧めいたします。

特別受益について

1 特別受益の意義

共同相続人の中に、被相続人から遺贈を受けたり、生前に贈与を受けたりした者がいた場合に、相続に際して、この相続人が他の相続人と同じ相続分を受けるとすれば不公平となります。そこで、民法は、共同相続人間の公平を図ることを目的に、特別な受益(贈与)を相続分の前渡しとみて、計算上贈与を相続財産に持ち戻して(加算して)相続分を算定することにしています(民法903条)。

この「みなし相続財産」を基礎にしたうえで、各共同相続人の相続分を乗じて各相続人の相続分(一応の相続分)を算定し、特別受益を受けた者については、この額から特別受益分を控除し、その残額をもって特別受益者が現実に受けるべき相続分(相続開始時点での具体的相続分)を確定することになります。

特別受益が問題になる場合について詳しくはこちら>>

2 特別受益の種類

(1)遺贈

遺贈(遺言による遺産の譲渡)は、その目的にかかわりなく、包括遺贈も特定遺贈もすべて特別受益となります(民法903条)。なお、「相続させる」旨の遺言があった場合も同様です。

(2)生前贈与

当該生前贈与が相続財産の前渡しとみられる贈与であるか否かを基準として判断することになります。

① 婚姻又は養子縁組のための贈与

・持参金、支度金

一般的には特別受益となるとされています。

・結納金、挙式費用

一般的には特別受益にはならないとされています。

・その他

相続人全員に同程度の贈与がある場合には、持戻し免除の黙示の意思表示があったものと認めるのが相当であると解されています。

② 学資

・高等学校の学資(入学金や授業料等)

被相続人の生前の資力、社会的地位、他の相続人との比較などを考慮して判断されることになります。

・高等学校卒業後の学資(専門学校、大学、留学費用等)

私立の医科大学の入学金等のように特別に多額なものでない限り、子の資質・能力等に応じた親の子に対する扶養義務の履行に基づく支出とみることができます。

・その他

相続人全員が大学教育を受け、ほぼ同額の受益を受けている場合には、「特別受益として考慮しない」とするのが相当とされています。

③ その他生計の資本としての贈与

居住用不動産の贈与、その取得のための金銭の贈与、営業資金の贈与、借地権の贈与など、生計の基礎として役立つような財産上の給付をいい、独立のための資金と考えるのが相当です。そうしますと、遊興費支払のための金銭の贈与等はこれに当たらないとされています。

④ 扶養義務に基づく援助(お祝い等)

新築祝い、入学祝いなど、親としての通常の援助の範囲内でなされたお祝いの趣旨に基づく贈与は特別受益にはならないとされています。 

3 特別受益者の範囲

特別受益を受けた者として持ち戻しをする必要がある者は、共同相続人に限られます。

(1)被代襲者の得た特別受益

代襲相続が発生した場合の被代襲者に対しての生前贈与は、代襲相続人の特別受益となりますので、代襲相続人は、被代襲者の持ち戻し義務を引き継ぐことになります。

(2)代襲相続人の得た特別受益

通説では、代襲原因が発生する前の代襲者の特別受益は持戻しの対象となりません。他方、代襲原因が発生した後の代襲者の受益は、持戻しの対象となります。

(3)相続人の配偶者・子の得た特別の受益

①持戻しの可否

被相続人が相続人の配偶者・子らに対して贈与をしたとしても、これは相続人に対する贈与ではないから、持戻しの対象とはならないとされています。

②例外

真実は相続人に対する贈与であるのに、名義のみ配偶者・子としたというような場合には、特別受益に該当すると解されています。

特別受益が問題となる事例

(1)共同相続人の一人が受取人とされる生命保険と特別受益

死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、原則として、特別受益とはならないが、例外的に、特別受益に準じて持戻しの対象となる場合もありますので、注意が必要です。

【例外】

最高裁の判例では、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は、特別受益に準じて持戻しの対象となるとされています。

(2)死亡退職金等の遺族給付

受給権者の生活保障を目的とした制度に依拠して支出されたものであることを考慮すると、持戻しの対象にはならないということになります。

(3)遺産の無償使用(使用貸借)による利益と特別受益

① 使用借権負担付きの土地について

土地の利用関係

遺産である土地の上に相続人の一人が被相続人の許諾を得て建物を建て、その土地を無償で使用している場合には、使用借権が設定されている土地として評価することになります。

・使用貸借負担による減価

使用借権には第三者への対抗力がありませんが、他人所有の建物が建っている土地は事実上売却が困難なため、その客観的評価額が一定程度減額され、更地価格の1~3割程度減価されることになります。

・結論

相続開始時における遺産土地についての使用借権は、生計の資本としての贈与として、特別受益になるとされています。

→遺産土地に建物を建て、その土地を無償で使用している相続人は、使用借権の設定を受けたことにより、土地使用借権の生前贈与があったものとして、土地使用借権相当額について特別受益を受けたと考えることになります。この場合、被相続人の持戻し免除の意思表示の有無を検討することになります。

・実務

使用借権が設定されている土地として使用借権減価をした上、使用借権評価額相当の利益を無償使用してきた相続人の特別受益として持戻し、結局、更地評価になるという二段評価をする考え方が主流とされています。

② 地代相当額も特別受益にあたるとする見解について

特別受益制度は、遺産の前渡し分を遺産分割の際に考慮して持戻し計算する制度であるから、相続開始時の遺産の減少分、つまり、使用借権相当額が特別受益となります、他方、遺産の価値とはかかわらない地代相当額は特別受益とはならないとされています。

特別受益が問題になる場合について詳しくはこちら>>

寄与分について

1 寄与分の意義・要件

(1)意義

共同相続人中に、被相続人の財産の維持又は増加に特別の寄与(通常期待される程度を超える貢献)をした者があるときに、相続財産からその者の寄与分を控除したものを相続財産とみなして相続分を算定し、その算定された相続分に寄与分を加えた額をその者の相続分とすることによって、その者に相続財産のうちから相当額の財産を取得させ、共同相続人間の公平を図る制度です(民法904条の2)。

(2)要件
相続人自らの寄与があること
当該寄与行為が「特別の寄与」であること
「特別の寄与」の意義

被相続人と相続人の身分関係に基づいて通常期待されるような程度を超える貢献である必要があります。

特別の寄与に当たらないもの

夫婦間の協力扶助義務(民法752条)、親族間の扶養義務・互助義務(民法877条1項)の範囲内の行為は特別の寄与にはあたりません。

・被相続人の遺産が維持又は増加したこと(財産上の効果の必要性)

相続人の行為によって、その行為がなかったとすれば生じたはずの被相続人の積極財産の減少や消極財産(債務)の増加が阻止され、又はその行為がなかったとすれば生じなかったはずの被相続人の積極財産の増加や消極財産の減少がもたらされることが必要です。

・寄与行為と被相続人の遺産の維持又は増加との間に因果関係があること

寄与分が問題になる場合について詳しくはこちら>>

2 主な寄与行為の態様

(1)家業従事型(被相続人の事業に関する労務の提供)

具体的要件=①特別の貢献、②無償性、③継続性、④専従性が必要

(2)金銭等出資型
(3)療養看護型(被相続人に対する療養看護)

具体的要件=①療養看護の必要性、②特別の貢献、③無償性、④継続性、⑤専従性が必要

当事務所の弁護士に特別受益と寄与分問題を相談するメリットとは

弁護士×家事調停官の強みを生かして

当事務所の代表弁護士は、2014年10月から2018年9月までの4年間、さいたま家庭裁判所に、家事調停官(非常勤裁判官)として勤務し、一人の弁護士ではなかなか経験できないような数の様々な調停事件を担当しました。

家庭裁判所で扱う相続事件(遺産分割や遺留分請求等)や離婚事件について、裁判所で調停委員として、相続の際に当事者双方からお話を伺ってまとめていくということをやっています。4年の間で700件以上の事件を処理し、そのうち約100件程度の相続事件を解決してきました。

家庭裁判所で扱う相続事件について、裁判官がどのように考え、解決していくのか、裁判官の視点と解決までの道筋を知り得たことは、弁護士活動において大きな強みといえます。

この裁判官としての経験こそが、他の弁護士と最も異なる当事務所の最大の強みであると自負しております。

弁護士による相続の相談実施中!

弁護士に相続の無料相談武蔵野経営法律事務所では、初回相談は60分無料となっております。

「遺産相続でトラブルになってしまった」

「不安なので相続手続をお任せしたい」

「子どもを困らせないために生前対策をしたい」

などのニーズに、相続案件に特化した弁護士がお応えいたします。

お気軽にご相談ください。

相談の流れについてはこちら>>>

電話での相談予約は、04-2936-8666にお電話ください

メールでの相談予約は24時間受け付けております。

当事務所の相続問題解決の特徴

詳しくはこちらから>>>

相続の悩みはどんな場合に誰に相談すべきか

当事務所でよくご相談いただくサービスメニュー

遺産分割遺留分遺言作成

当事務所に寄せられるQ&A

この記事の執筆者

武蔵野経営法律事務所

弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官

加藤 剛毅

専門分野

相続、不動産、企業法務

経歴

埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

詳しい弁護士紹介はこちら>>

04-2936-8666

04-2936-8666

平日9:00~20:00

お気軽にお電話ください

04-2936-8666

受付時間:平日9:00~20:00