相続人が多数・面識のない相続人がいる
相続人の数が多かったり、面識のない相続人がいたりする場合も、遺言書がなければ、相続人全員で遺産分割協議を行わなければなりません。
しかし、このようなケースでは話し合いがまとまらないことも多いですし、連絡のつかない相続人がいることも少なくありません。
この記事では、相続人が多数・面識のない相続人がいる場合の遺産分割の流れと、困ったときの対処法について解説します。
Contents
相続人が多数・面識のない相続人がいる場合の遺産分割の流れ
相続人が多数・面識のない相続人がいる場合も、遺産分割の基本的な流れは通常のケースと同じです。ただし、以下のように効率よく進めていくことが大切になります。
相続人の確定
まずは、戸籍謄本(除籍謄本や改正原戸籍謄本も含みます。)を収集し、相続人として誰がいるのかを確定させます。
連絡先が分からない相続人がいる場合には、戸籍の附票を取得すれば現住所を確認できます。
財産目録の作成
併せて、相続財産の調査も行いましょう。
多数の相続人や面識のない相続人がいる場合には、各相続人へ遺産の内容を効率よく伝えるために、財産目録を作成することをおすすめします。
各相続人への連絡
相続人と相続財産が確定したら、各相続人へ連絡することになります。
最初の連絡としては、手紙の送付がおすすめです。相続人の数が多い場合は、一人一人に電話をかけるよりも、手紙を送付する方が効率的だからです。
また、面識のない相続人へいきなり電話をかけるよりも、まずは手紙で被相続人が亡くなったことと相続財産の内容を伝えて、遺産分割への協力を依頼した方が、相手の理解が得られやすくなります。
遺産分割協議
相続人全員と連絡が取れたら、遺産分割協議を行います。
遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますが、一堂に会して話し合う必要はなく、個別に手紙や電話、メールなどでやりとりして調整していくことも可能です。
一定の内容で相続人全員の合意が得られたら、遺産分割協議書を作成し、全員が署名・押印して印鑑証明書を添付します。各相続人から署名・押印、印鑑証明書をもらう際も、郵送によることができます。
遺産分割調停・審判
遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所へ遺産分割調停を申し立てて、調停委員会を介して話し合うことになります。
調停でも話し合いがまとまらない場合には、自動的に審判の手続きに移行し、家庭裁判所に遺産分割の内容を決めてもらうことができます。
遺産分割協議をスムーズに進めるコツ
多数の相続人や面識のない相続人がいるときの遺産分割協議をスムーズに進めるコツとして、以下のことが挙げられます。
相手にとってのメリットを説明する
まずは相手の意見を丁寧に聴くことが大切ですが、多くの場合、話し合いがある程度進んだ段階で遺産分割案を提示し、「この案に同意してほしい」と依頼する必要性が出てきます。
相手の理解を得るためには、一方的に意見を押し付けるのではなく、相手にとってのメリットも説明することが重要です。
同意してもらうことで面倒な手続きから解放される、相続税の支払いを免れることができる、放置するとさらなる相続が発生し、より複雑なトラブルに巻き込まれる可能性が高いことなどを説明するとよいでしょう。
相続放棄を勧める
相手の理解が得られたら、相続放棄をしてもらうことも有効な手段のひとつです。
相続放棄をした人ははじめから相続人にならなかったものとみなされますので、これにより、相続人の数を減らすことができます。そうすることで遺産分割協議における話し合いを進めやすくなるでしょう。
ただし、相続放棄をするには相続開始を知ったときから3ヶ月以内に申述の手続きをしなければなりませんので、ここまでのステップを迅速に進める必要があることに注意が必要です。
相続分を譲渡してもらう
相続分を譲渡してもらうのも有効な方法のひとつです。
相続分の譲渡とは、特定の相続人が有する相続財産に対する持分(相続分)を、他の相続人や第三者に譲り渡すことです。相続分を譲渡した人は相続人としての地位を失うため、遺産分割協議には譲渡人ではなく譲受人が参加することになります。
この方法によっても、相続人の数を減らして遺産分割協議を効率的に進めることが可能となります。
相続分を譲渡してもらうには裁判所の手続きは不要であり、譲渡人と譲受人とで合意した上で「相続分譲渡証明書」を作成して、両者が署名・押印し、印鑑証明書を添付します。
他の相続人とのトラブルを回避するために、「相続分譲渡通知書」を他の各相続人へ送付しておくことも大切です。
ただし、相続分を譲渡した人も被相続人の借金など負の遺産の支払い義務を負うことや、譲受人に贈与税や譲渡所得税がかかる可能性もあることなどに注意が必要です。
遺産分割で困ったときの対処法
ここでは、多数の相続人や面識のない相続人がいる場合の遺産分割で困ったときの対処法をご紹介します。
連絡がつかない相続人がいるとき
連絡がつかない相続人がいて、居場所を調査しても尋ね当たらない場合には、不在者財産管理人の選任などを検討することになります。
不在者財産管理人が選任された場合には、その人を遺産分割協議に参加させて、遺産分割を進めることが可能です。
どうしても協力してくれない相続人がいるとき
遺産分割協議では相続人同士の意見が対立することも多いですし、疎遠となっている相続人や面識のなかった相続人などは、単に面倒だからという理由で協力してくれないことも少なくありません。
どうしても協力してくれない相続人がいるときには、遺産分割調停・審判の申し立てが有効です。
家庭裁判所に申し立てをすれば、最終的には家庭裁判所が審判で遺産分割の内容を決めてくれます。審判が確定した後は、その内容に従って強制的に遺産を分割することができます。
相続人の中に認知症の人や未成年者がいるとき
相続人の数が多いときは、その中に認知症の人や未成年者が含まれる可能性も高くなります。
認知症の人については成年後見人を、未成年者については特別代理人を選任しましょう。遺産分割協議には成年後見人や特別代理人に参加してもらうことにより、遺産分割を進めることが可能となります。
ただし、成年後見人や特別代理人には、その相続に利害関係のない人を選ぶ必要があります。実務上は、弁護士や司法書士などの専門家が選任されることが多いです。
多数の相続人や面識のない相続人が発生する原因
被相続人に子どもや兄弟姉妹が多いことや、認知した子がいることなどが原因で、多数の相続人や面識のない相続人が発生するケースも珍しくありません。しかし、少子化の進展に伴い、このようなケースは次第に減少しつつあります。
その他の原因としては、相続手続きを長年にわたって放置していることが挙げられます。
被相続人に4人の子どもがいて、それぞれの子どもに3人の子ども(被相続人にとっての孫)がいたとしましょう。
被相続人が亡くなった時点で配偶者が先になくなっていたとすれば、相続人は子ども4人です。しかし、相続手続きを放置したまま4人の子どもが全員亡くなると、その配偶者や子どもが相続するため、相続人の数は12~16人にも上ってしまいます。
長年にわたって相続を放置すればするほど相続人の数はネズミ算式に増えていきますし、互いに面識のない相続人も増えていくことになるでしょう。
いたずらに相続関係を複雑にしないためには、相続が発生した都度、遺産分割を適切に行っておくべきです。
まとめ
多数の相続人や面識のない相続人がいるときの遺産分割では、弁護士のサポートを活用することをおすすめします。
弁護士は相続人や相続財産の調査から、各相続人への連絡、遺産分割協議まで、全面的にサポートしてくれます。遺産分割の手続きを効率よく進めることができますし、納得のいく結果も期待できるでしょう。
また、事前の対策として、被相続人が生前に遺言書を作成しておくこともおすすめです。遺言書を有効かつ適切に作成するためには専門的な知識が要求されますので、弁護士に相談してみた方がよいでしょう。
当事務所では、500件以上の相続問題を解決に導いてきた実績に基づき、さまざまな相続問題の解決を親身にサポートいたします。
相続人の数が多すぎる、面識のない相続人がいて遺産分割の進め方が分からない場合など、遺産相続のトラブルでお悩みの際は、当事務所へお気軽にご相談ください。
この記事の執筆者
- 弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
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専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。








