遺産分割調停を申し立てられたときの対応方法
遺産分割協議がスムーズに進まないと、他の相続人から遺産分割調停を申し立てられることがあります。
申し立てられた側の相続人には突然、裁判所から書類が届くこともありますので、驚いてしまう方も多いことでしょう。しかし、調停は話し合いによる解決を図る手続きですので、恐れる必要はありません。落ち着いて、適切に対応していくことが大切です。
この記事では、遺産分割調停を申し立てられたときの適切な対応方法について、わかりやすく解説します。
Contents
遺産分割調停とは
遺産分割調停とは、相続人同士が家庭裁判所において遺産分割の方法について話し合い、合意による解決を図る手続きのことです。
相続人同士が直接話し合っても遺産分割案がまとまらなかった場合に、話し合いの場を家庭裁判所に移して、協議を続ける手続きになります。
調停では相続人同士が話し合うのではなく、裁判官1名と調停委員2名で構成される調停委員会を介して話し合います。
主に調停委員が申立人と相手方(申し立てられた側)の双方から個別に意見を聴き取り、助言を交えて話し合いを調整したり、解決案を提示したりして、相続人全員の合意を目指します。
遺産分割調停の流れ
それでは、遺産分割調停を申し立てられたときの基本的な対応方法について、手続きの流れに沿ってご説明します。
家庭裁判所への出廷
遺産分割調停を申し立てられると、家庭裁判所から「調停期日の通知書」が送付されます。この書類には第1回調停期日の日時・場所が記載されていますので、ご確認の上、出廷しましょう。
当日、家庭裁判所に着いたら書記官室を訪ねてください。事件番号や氏名を伝えると、待合室に案内されます。
待合室は申立人用と相手方用とが別々に、離れた場所に設置されており、申立人と相手方が顔を合わせないように配慮されています。
第1回調停期日
指定の時刻前後になると調停委員が待合室を訪れますので、その案内に従って調停室に入ります。
調停室では、主に2名の調停委員と話をすることになります。ここで、自分の言い分をしっかりと調停委員に伝えることが大切です。
ひと通りの話が終わると調停委員の指示に従って退室し、次は申立人が入室して調停委員と話をします。このようにして、申立人と相手方とが交替で調停委員と話す形で、話し合いが進められていきます。
調停委員と1度に話す時間は30分程度で、1回の調停期日にかかる時間は2~3時間程度が一般的です。
1回の調停期日で手続きが終了することは少なく、多くの場合は第2回目の調停期日の日時が指定されます。
第2回目以降の調停期日
第2回目以降の調停期日においても、第1回目の期日と同様に、指定された日時に出廷し、申立人と相手方が交替で調停委員と話す形で、話し合いを重ねていきます。
話し合いがある程度、煮詰まった段階で、調停委員から解決案(遺産分割案)が提示されることもあります。ただし、あくまでも調停は話し合いの手続きですので、調停委員からの提示に法的な拘束力はありません。
解決案に納得できない場合は安易に妥協せず、具体的な意見を調停委員に伝えましょう。
調停成立
家庭裁判所での話し合いの結果、相続人全員が一定の内容で合意すれば、調停が成立します。
その場合は調停調書が作成され、最後に裁判官がその内容を読み上げますので、間違いがないか慎重に確認しましょう。
調停調書が発行されたら、その記載内容に従って遺産を分割することになります。
審判への移行
話し合いがまとまらなかった場合は調停不成立となり、自動的に遺産分割審判の手続きに移行します。
審判では、家庭裁判所が、当事者の提出した意見や証拠の内容を踏まえて、遺産分割の方法を定めます。
家庭裁判所が定めた内容は審判書に記載され、各相続人へ送付されます。審判の内容に納得できない場合は、審判書を受け取ってから2週間以内に即時抗告を申し立てることが可能です。
即時抗告が受理されると高等裁判所で再審理され、審判の内容が変更される可能性もあります。
2週間以内に即時抗告の申し立てがなければ家庭裁判所の審判が確定しますので、その内容に従って遺産を分割することになります。
遺産分割調停を欠席するとどうなる?
第1回調停期日の日時は相手方の都合を考慮せずに指定されますので、仕事や家事などの都合で出廷できないこともあるでしょう。
ここでは、調停を欠席するとどうなるのか、どうしても出廷できない場合はどうすればよいのか、について解説します。
欠席した場合のデメリット
第1回調停期日に欠席したとしても、ただちに審判を下されることはまずありません。
通常は出廷した相続人だけが調停委員と話をした上で、次回の調停期日が指定されます。
しかし、無断で欠席を続けると調停委員の印象が悪くなり、その後の話し合いが不利になってしまう可能性があります。
最悪の場合は、相手方の言い分のみが反映された審判が下されることにもなりかねません。
指定された期日に出廷できない場合の対処法
指定された期日に出廷できない場合は、早めに家庭裁判所へ連絡しましょう。電話番号や担当書記官の氏名は「調停期日の通知書」に記載されています。
場合によっては、日程を変更してもらえることもあります。第1回調停期日の日程変更ができない場合には、第2回目の期日について希望の日時を伝えることが大切です。
調停期日に欠席する場合でも、自分の言い分をまとめた書面を期日前に提出しておけば、その内容を話し合いに反映させることができます。
また、弁護士に依頼して、代理人として出廷してもらう方法も有効です。
遺産分割調停を有利に進めるためのポイント
遺産分割調停を申し立てられた場合でも、以下のポイントに注意することで、調停を有利に進めやすくなります。
裁判所から送付された書類の内容を確認する
第1回調停期日前に、家庭裁判所から「調停期日の通知書」と併せて「調停申立書の写し」も送付されてきます。
調停申立書の写しには、申立人が希望する遺産分割案や、申立人の具体的な言い分が記載されている場合もあります。その場合は、じっくりと読み込んで、申立人の主張や言い分を把握することが重要です。
希望する解決案を検討する
次に、ご自身が希望する解決案(遺産分割案)を検討しましょう。
このとき、ご自身にとって全面的に有利な案を固めるのではなく、譲歩できるところは譲歩して、現実的に妥当と考えられる案を検討することが大切です。
調停は双方が譲り合って合意による解決を目指す手続きですので、ご自身の意見を一方的に押し付けようとすると、解決が難しくなってしまいます。
安易に妥協する必要はありませんが、どこまでなら譲歩できるのかを検討しておくとよいでしょう。
自分の意見を記載した書面を提出する
できれば、ご自身の意見を法的に整理してまとめた書面を作成し、第1回調停期日前に提出しておきましょう。調停が始まる前に、調停委員にこちらの言い分を理解してもらうことで、話し合いを有利に進めやすくなります。
調停期日が2回、3回と続く場合は、各期日の間にも、それまでの話し合いの内容を踏まえて言い分を整理し直した書面を提出すると、より効果的です。
証拠を提出する
ご自身の主張を裏づける事実を証明できる証拠があれば、それも第1回調停期日前に提出しましょう。
調停は話し合いの手続きですので証拠は必須ではありませんが、証拠があることで主張の説得力が強化されますので、話し合いをより有利に進めやすくなります。
他の相続人との関係性や、遺産分割協議における話し合いの状況、ご自身の思うところなどをストーリー形式で記載した「陳述書」も、証拠の一つとなります。積極的に陳述書を作成し、提出するとよいでしょう。
調停委員の理解を得る
家庭裁判所においては調停委員が話し合いを仲介しますので、調停委員の理解を得ることは重要です。
調停委員は中立・公平な立場ですので、片方の当事者に肩入れすることはありません。しかし、実際には、筋の通った主張をしている当事者の言い分を尊重して話し合いを進めることも多いのが実情です。
調停委員にこちらの言い分を尊重してもらえれば、調停を有利に進めやすくなることは言うまでもありません。
そのためには、説得力のある書面や有力な証拠を提出するとともに、調停期日には社会人としての常識を踏まえた態度で、冷静に話すことが重要となります。
遺産分割調停から審判へ移行したときの対応方法
遺産分割調停が不成立となり審判へ移行した場合、家庭裁判所は、当事者が提出した意見や証拠を踏まえて、遺産の分割方法を判断することになります。そのため、充実した内容の書面と、有力な証拠を提出することが重要です。
調停で話した内容は記録されていませんので、審判へ移行した段階で、改めて意見を法的に整理して記載した書面を提出する必要があります。
証拠についても、未提出のものや、新たに入手できたものがあれば提出しましょう。
遺産分割調停を弁護士に依頼するメリット
申し立てられた遺産分割調停を有利に進めるための最も有効な方法は、弁護士によるサポートを受けることです。
遺産分割調停を弁護士に依頼すれば、意見をまとめた書類や陳述書などは、弁護士が作成して提出してくれます。
有力な証拠の収集も弁護士がサポートしてくれますし、家庭裁判所への提出手続きは弁護士に任せることが可能です。
調停期日には、弁護士も同席してくれます。ご自身が調停委員とのやりとりに困った場合には、弁護士が適切な発言をしてくれます。調停委員から申立人の言い分を伝えられた際にも、弁護士がその場で的確に反論してくれます。
そして、遺産分割問題の解決実績が豊富な弁護士は交渉術にも長けていますので、調停での話し合いも有利に進めやすくなります。
審判へ移行した場合にも、弁護士が充実した主張書面や証拠を提出してくれます。
このように、弁護士は遺産分割調停から審判に至るまで、全面的にサポートしてくれますので、満足できる結果が期待できるでしょう。
まとめ
遺産分割調停を申し立てられても、家庭裁判所での話し合いはこれから始まりますので、慌てる必要はありません。
ただし、法的知識が不足した状態で調停に臨めば、申立人のペースで話し合いを進められてしまう可能性が高いです。法的知識の不足を補うためにも、早めに弁護士へ相談してみることをおすすめします。
所沢の武蔵野経営法律事務所では、遺言や相続問題に力を入れております。これまで解決に導いてきた相続事件は600件を超えており、相続問題に関する豊富な実績がございます。
遺産分割調停につきましても、申し立てる側・申し立てられた側を併せて数多くの案件を担当し、解決に導いて参りました。
初回相談は60分まで無料ですので、遺産分割調停を申し立てられて対応にお困りの際は、お気軽に当事務所へお問い合わせください。
この記事の執筆者
- 弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
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専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。
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