相続人同士が不仲または疎遠な場合の相続手続き
相続人同士が不仲、または疎遠なために相続手続きを進めることができずに、お困りの方もいらっしゃることでしょう。
遺産分割に期限はありませんが、放置していると遺産を受け取ることができないだけでなく、不動産の固定資産税の支払いや、相続税の申告・納税などをはじめとして、さまざまなリスクも抱えてしまうことに注意が必要です。
今回は、相続人同士が不仲または疎遠な場合でも適切に遺産を分割する方法について、わかりやすく解説します。
Contents
遺産分割協議には相続人全員の合意が必要
遺産を分けるための話し合い(遺産分割協議)は、相続人全員で行う必要があります。
なぜなら、法定相続人(配偶者、子、両親、兄弟姉妹など)には民法で一定割合の相続分(法定相続分)が保障されているからです。他の相続人の法定相続分を勝手に処分することはできないため、相続人全員が合意しなければ遺産分割協議は成立しないのです。
遺産分割協議に参加しなかった相続人や、参加しても合意しなかった相続人が1人でもいれば、その遺産分割協議は無効となってしまいます。
相続人同士が不仲な場合や疎遠な場合でも、全員の合意を目指して相続手続きを進めていくことが必要です。
相続人同士が不仲または疎遠な場合の対処法
相続人同士が不仲または疎遠な場合の相続手続きは、以下の流れで進めていきましょう。
手紙やメールのやりとりで協議を進める
遺産分割協議における話し合いは、必ずしも面と向かって行う必要はありません。手紙やメールなどのやりとりで行うことも可能です。
相続人同士が不仲な場合には、対面や電話での話し合いよりも、手紙やメールといった連絡方法を利用した方が、感情的な対立を回避しやすくなるでしょう。こちらが適正と考える遺産分割案や、その理由を文章にして送ることで、正確に伝えることができるというメリットもあります。
疎遠となっている相続人に対しても、いきなり電話をかけて遺産分割の話をするよりも、まずは手紙を送った方が、話し合いをスムーズに始めやすくなるでしょう。
ただし、手紙やメールでのやりとりだけでは、双方の認識にすれが生じやすいことに注意が必要です。遺産分割協議をまとめる段階では、電話などの直接的な連絡方法によって、最終的な意思確認をした方が望ましいといえます。
法定相続分どおりに遺産分割をする
法定相続分どおりに遺産を分ける場合は、遺産分割協議は不要です。
したがって、相続人同士が不仲または疎遠で話し合いが進まない場合には、法定相続分どおりに遺産分割をするのも、ひとつの解決方法となります。遺産のほとんどが現金や預貯金などの流動資産のケースでは、この方法でも大きな問題はないでしょう。
しかし、遺産の中に不動産があれば、その不動産は相続人全員の共有名義になってしまうという問題が残ります。
共有名義の不動産を売却する場合や、賃貸する場合には、共有者全員の合意が必要です。つまり、結局は相続人全員の合意が必要となるのです。
不動産が共有名義のままでは有効活用することも難しいですし、相続人の誰かが亡くなり新たな相続が発生した場合には権利関係が複雑化し、さらに遺産分割が難しくなるという問題もあります。
このような問題を解消するためには、家庭裁判所の手続きを利用して遺産を分割する必要性も生じてきます。
遺産分割調停で話し合う
相続人同士で遺産分割協議を進めることが難しい場合は、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てることが有効です。
調停では、指定された期日に相続人全員が家庭裁判所へ出頭し、調停委員を介して話し合い、合意による解決を目指します。専門的な知識を有する調停委員が中立かつ公平な立場で話し合いを仲介しますので、相続人だけで話し合う場合よりも合意に至る可能性が高まります。
連絡を無視する相続人や、話し合いを拒否する相続人も、家庭裁判所からの呼び出しには応じて話し合いのテーブルにつくケースが多いので、諦めずに遺産分割調停を申し立ててみましょう。
遺産分割審判で裁判所に遺産の分け方を決めてもらう
遺産分割調停でも相続人全員の合意が得られなかった場合は調停不成立となりますが、自動的に審判(遺産分割審判)の手続きへ移行します。
審判では、各当事者が提出した主張や証拠に基づき、家庭裁判所が中立かつ公平な観点から遺産分割の内容を定めます。家庭裁判所が決定した内容は審判書に記載され、各当事者へ郵送されます。
審判の内容に納得できない場合は、審判書を受け取ってから2週間以内に即時抗告を申し立てることにより、高等裁判所での再審理を求めることが可能です。
即時抗告の申し立てがなければ審判が確定しますので、その後は審判書の記載内容に従って強制的に遺産を分けることが可能です。
連絡先が分からない相続人や行方不明の相続人がいるときの対処法
疎遠となっている相続人の中には、連絡先が分からない人や、行方不明となっている人がいることもあるでしょう。
その場合でも、遺産分割協議は相続人全員で行う必要がありますので、以下の対処法が必要となります。
所在調査をする
まずは、連絡先が分からない相続人や行方不明となっている相続人の所在を調査する必要があります。
その方法としては、相手の「戸籍の附票」を取り寄せるのが有効です。戸籍の附票には、その戸籍が作成されてから現在までの住所の移り変わりが記載されていますので、これを取得することにより相手の現住所(最後の住所)が分かります。
相手の住所が判明したら、手紙を送付してみましょう。この手紙は「本人限定郵便」で発送することが大切です。「あて所に尋ねあたりません」として郵便物が戻ってきた場合には、相手本人がその住所にはいないことの証拠となります。
その場合は、さらに親族・知人から聞き取りをしたり、最寄りの警察署や交番で「行方不明者届」を提出したりしておきましょう。
このように、自分でできる限りの所在調査をしておくことが、次の「不在者財産管理人の選任申し立て」や「失踪宣告の申し立て」の準備にもなります。
不在者財産管理人の選任を申し立てる
所在調査を尽くしても行方が分からない相続人がいるときは、不在者財産管理人の選任を申し立てることが考えられます。
申立先は、所在調査によって判明した、行方不明者の最後の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所によって不在者財産管理人が選任されたら、行方不明者に代わって不在者財産管理人に遺産分割協議へ参加してもらうことにより、遺産を分けることが可能となります。
ただし、不在者財産管理人が遺産分割協議で合意するためには、そのための許可を家庭裁判所でとってもらわなければなりません。
不在者財産管理人は不在者のためにその財産を適切に管理する義務を負っていますので、行方不明者にとって一方的に不利な遺産分割案では、家庭裁判所の許可が得られないこともあります。基本的には、行方不明者にも法定相続分に相当する遺産を分けることが必要です。
失踪宣告の申し立てをする
行方不明となっている相続人の生死が一定期間にわたって不明となっている場合には、失踪宣告の申し立てをすることも考えられます。
失踪宣告の申立先も、所在調査によって判明した、行方不明者の最後の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。
家庭裁判所が失踪宣告をした場合には、行方不明者が死亡したものとみなされますので、それを前提として遺産分割を進めることが可能となります。
なお、失踪宣告には次の2種類があります。
・普通失踪…従来の住所・居所を去った後、7年間生死が不明な場合(7年が経過したときに死亡したとみなされる)
・特別失踪…戦争や海難事故、大規模な災害など死亡原因となり得る危難に遭遇し、その危難が去った後1年間生死が不明な場合(危難が去ったときに死亡したとみなされる)
生前に遺言書を作成しておくことの重要性
被相続人(亡くなった方)が作成した遺言書で遺産の分け方が指定されていれば、遺産分割協議は不要です。遺言の内容は遺産分割協議よりも優先されるため、相続人全員の合意がなくても遺言書の記載内容に従って遺産を分けることができるのです。
親族が不仲または疎遠で、ご自身が亡くなった後の相続トラブルを防止したいとお考えの方は、遺言書を作成しておくとよいでしょう。
ただし、遺言の内容が著しく不公平な場合には遺留分に関する争いが生じたり、自筆証書遺言を作成する場合には方式の不備で無効になりやすかったりなど、いくつかの問題点もあります。
有効かつ適切な遺言書を作成するためには、弁護士へのご相談をおすすめします。
遺産分割のお悩みは弁護士へご相談を
遺産分割で困ったときは、弁護士への依頼も検討してみましょう。
相続人同士が不仲で話し合いが進まないケースでも、弁護士を介して話し合うことで冷静な交渉が可能となり、円滑に遺産分割協議が成立することも多いです。
遺産分割調停や審判が必要となった場合でも、弁護士の全面的なサポートを受けることにより、手続きを有利に進めやすくなります。
連絡先が分からない相続人や行方不明の相続人がいる場合には、所在調査から不在者財産管理人の選任申し立てや失踪宣告の申し立てまで、弁護士に任せることが可能です。
当事務所では、600件以上の相続問題を解決に導いてきた実績に基づき、さまざまな相続問題の解決を親身にサポートいたします。
相続人同士が不仲・疎遠で遺産分割協議が進まない場合など、遺産相続のトラブルでお悩みの際は、当事務所へお気軽にご相談ください。
この記事の執筆者
- 弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
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専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。
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