婚外子がいる場合の相続
身内の方が亡くなり、相続手続きを進めようとしたところ、隠し子などの婚外子が現れるケースは珍しくありません。
被相続人(亡くなった方)の実の子であっても、婚外子には相続権があるケースとないケースとがあることに注意が必要です。
この記事では、婚外子がいる場合の相続手続きでやるべきことや、注意点などについて解説します。
Contents
婚外子とは
婚外子とは、結婚していない男女の間に生まれた子どものことであり、非嫡出子ともいいます。
これに対して、結婚している夫婦の間に生まれた子どもは婚内子であり、嫡出子ともいいます。
民法上、以下の4つのケースでは子どもが嫡出子と推定されます。推定されるというのは、異なる事実が証明されない限りは嫡出子として扱うという意味です。
・母親が婚姻中に妊娠し、出生した子
・母親が婚姻前に妊娠し、婚姻成立後に出生した子
・婚姻成立から200日経過後に出生した子
・婚姻解消後から300日以内に出生した子
以上のどれにも該当しない子どもは、婚外子(非嫡出子)となります。
婚外子に相続権があるケース
婚外子のうち、父親に認知された子どもには相続権があります。
認知とは、父親が婚外子を自分の子であると認め、法律上の親子関係を発生させる手続きのことです。これにより父親と婚外子は法律上の親子となりますので、父親が亡くなると認知された婚外子が相続人となるのです。
これに対して、認知されていない婚外子には相続権がありません。
認知された婚外子の相続割合
認知された婚外子の相続割合は、婚内子の相続割合とまったく同じです。つまり、婚内子と婚外子は、完全に対等な立場の相続人となります。
以前は婚外子の相続割合は婚内子の相続割合の1/2とされていましたが、民法改正により、2013年9月5日以降に開始した相続については、婚内子と婚外子の相続割合は同一とされました。
例えば、相続人として妻と婚内子2人がいるケースでは、妻の相続割合は1/2、婚内子の相続割合は1/4ずつです。
このケースで認知された婚外子が1人現れると、「子ども3人」のケースとなりますので、子どもの相続割合は1/6ずつとなることに注意しなければなりません。
婚外子がいる場合の相続手続き
認知された婚外子がいる場合は、その人も含めて遺産分割を行う必要があります。
遺言書がない場合には相続人全員で遺産分割協議をすることになりますが、認知された婚外子も相続人ですので、その人も遺産分割協議に参加させなければなりません。もし、認知された婚外子を除外して遺産分割虚偽を成立させても無効となりますので、ご注意ください。
認知された婚外子と交流がなかった場合には、まず、住民票を取り寄せるなどして所在を調査し、連絡を取りましょう。
所在が判明しても連絡が取れない場合や、連絡が取れても話し合いが進まない場合には、遺産分割調停や審判の申し立ても検討することになります。
所在の調査を尽くしても判明しない場合には、不在者財産管理人の選任や失踪宣告の申し立てなどの法的措置をとった上で、相続手続きを進めます。
一方、認知されていない婚外子は相続人ではありませんので、その人を相続手続きに参加させる必要はありません。
婚外子がいる場合の相続税の計算方法
認知された婚外子がいる場合には、相続税を計算する際に、その人も法定相続人の1人としてカウントすることを忘れないようにしましょう。
相続税の計算では、まず、相続税がかかるかどうかを確認するために、次の計算式で基礎控除額を算出します。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
例えば、相続人として妻と婚内子2人がいる場合は、法定相続人が3人なので、基礎控除額は4,800万円です。
このケースで、認知された婚外子が1名加わると法定相続人が4人となりますので、基礎控除額は600万円加算され、5,400万円となります。
このように、認知された婚外子が加わることで、相続税がかかりにくくなり、かかったとしても納税の負担が軽くなるといえます。
その他にも、死亡保険金や死亡退職金の相続税非課税枠を計算する際にも、認知された婚外子を法定相続人の1人としてカウントすることを忘れないでください。
たとえ認知された婚外子には何も財産を渡さない場合でも、相続税を計算する際には、法定相続人の1人としてカウントすることとされています。
婚外子が認知を受ける方法
ここでは、婚外子の立場で相続を希望している方に向けて、父親から認知を受ける方法をご紹介します。
任意認知
父親が存命の場合、まずは父親に連絡を取り、認知してもらうように頼んでみましょう。
父親は、自らの意思で本籍地の役所へ認知届を提出することにより、婚外子を認知することができます。この方法のことを「任意認知」といいます。
任意認知をする場合、子どもが成人している場合にはその承諾書が必要ですが、母親の承諾は不要です。
遺言認知
父親が家族の手前、認知できないという場合には、遺言で認知してもらうように頼むこともひとつの方法です。
認知は遺言によってすることも可能です。父親が遺言書に婚外子を認知する旨を記載しておけば、死後、遺言執行者が認知の手続きを取ってくれます。
強制認知
父親がどうしても認知に応じない場合には、認知請求調停の申し立てを検討しましょう。
調停手続きで父と子が話し合って合意し、家庭裁判所もその合意が正当であると判断すれば、審判で認知が認められます。
調停で合意できない場合は、認知の訴え(認知請求訴訟)を提起することになります。この裁判で勝訴するか、和解が成立すれば、認知が認められます。
このように、家庭裁判所の手続きを通じて認知してもらうことを「強制認知」といいます。
強制認知では、基本的にDNA鑑定によって、生物学上の親子関係を立証することがポイントとなります。
死後認知
父親が既に亡くなっている場合でも、認知の訴え(死後認知請求訴訟)を提起することが可能です。
死後認知を求めるケースでも、DNA鑑定によって生物学上の親子関係を立証することが望ましいですが、亡き父親の家族による協力が得られないことも多いです。その場合には、別途、親子関係を立証するための証拠(出産した病院の記録など)を提出することがポイントとなります。
婚外子がいる場合の相続トラブルを回避する方法
次に、婚外子がいる父親の立場の方へ向けて、相続トラブルを回避する方法をご紹介します。
生前に話し合っておく
できれば、生前に家族に対して、婚外子がいることを打ち明けて、相続についてどうするのかを話し合っておきましょう。
家族にとっては、被相続人の死後に突然、見知らぬ相続人が出現するよりも、事前に事実を知っておいた方が冷静に対処しやすくなるはずです。
可能であれば婚外子にも連絡を取り、必要に応じて認知をした上で、話し合っておいた方が望ましいといえます。
遺言書を作成する
生前に事実を打ち明けられない場合には、遺言書を作成しておくことが有効です。
遺言によって婚外子を認知することもできますし、どの財産を婚外子に渡すのかを指定することもできます。
婚外子に相続させたくない場合には、その旨の遺言書を作成することも可能です。
ただし、認知した婚外子には遺留分があることにも注意しなければなりません。遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に保障された最低限の相続分のことです。
認知した子が遺留分を主張すると相続トラブルに発展してしまう可能性が高いので、遺留分にも配慮した内容の遺言書を作成した方がよいでしょう。
まとめ
認知された婚外子には相続権があり、認知されていない婚外子には相続権がありません。
しかし、認知されていないケースではまず、認知をめぐるトラブルが発生しがちですし、認知された後は相続分をめぐるトラブルが発生しやすいことに注意が必要です。
いずれの立場の方も、婚外子がいる相続の問題をスムーズに解決するためには、弁護士へのご相談をおすすめします。
弁護士は相続問題に関する豊富な専門知識と経験を踏まえて、最善の手段で解決に至るまで全面的にサポートしてくれます。
当事務所では、600件以上の相続問題を解決に導いてきた実績に基づき、さまざまな相続問題の解決を親身にサポートいたします。
婚外子がいる相続問題でお困りの際は、当事務所へお気軽にご相談ください。
この記事の執筆者
- 弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
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専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。








