埼玉県行政書士会 狭山支部 改正相続法研修会で講師を担当しました④

【遺留分制度に関する見直しについて】

1 遺留分減殺請求権の効力及び法的性質の見直し

(1)新法の概要

遺留分減殺請求権の法的性質を形成権とする従来の考え方を基準にすると、物権的効果が生じ、遺留分権利者と受遺者又は受贈者とが共有関係になるという状態の不都合を解消し、遺留分侵害額に相当する金銭債権のみが発生することとされました(「遺留分減殺請求権」から「遺留分侵害額請求権」へ変更)

(2)具体例の検討

Aは、自動車部品の製造を業とする株式会社を経営していましたが、推定相続人としては、専務を務め、後継者候補の長男Bと、会社の経営には関与していない長女Cがいました。Aは会社の株式と工場用不動産を長男Bに相続させる旨の遺言を作成しました。Aの死亡後、長女Cが長男Bに対して遺留分減殺請求をしました。

現行法:会社の株式と不動産はBとCの共有となります。

→共有状態の解消が協議により解決できない場合、Cは遺留分減殺請求訴訟(共有物分割請求訴訟)を提起することになります。

※共有状態の解消は訴訟の終了を待たなければなりません。

     ↓

新 法:会社の株式と不動産は共有にはなりません。

→CはBに対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求できるのみとなります。

※なお、長男Bは、金銭の支払につき、裁判所に期限の許与を求めることができます。

 

(3)実務への影響

新法により、遺留分をめぐる紛争として裁判所に事件が持ち込まれる のは、①AがBに対し、遺留分を侵害しているとして金銭請求を求めたときに、Bが任意に履行しない場合の遺留分侵害額請求訴訟、②Bが金銭債務の支払に直ちに応じられないときに、裁判所に相当の期限を設けることを求めるときの2場面になると考えられます。

 

この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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