相続分

相続分

   相続分とは、共同相続人の積極財産・消極財産を含む相続財産全体に対する各相続人の相続分をいいます。被相続人は、遺言で相続分を決めることができますが、この指定がないときに、民法の定める相続分の規定が適用されることになります。

 1 指定相続分

被相続人は遺言で相続分を指定することができます。

  (1)割合的指定

相続分が割合的に指定されることがあります。

  (2)特定遺産の指定

相続分の指定は、特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」旨の遺言の中で、特定の遺産をあげたときに同時に行われていることがあります。

  (3)遺留分を侵害する相続分の指定

ア 問題点

相続分の指定については、遺留分に関する規定に違反することはできません(民法902条1項ただし書)。そこで、遺留分を侵害する相続分の指定は、遺留分との関係でどのように捉えるかが問題となります。

イ 通説・実務

相続分の指定については、遺留分に関する規定に違反することはできないが、このような相続分の指定も当然には無効ではなく、遺留分権利者の減殺請求により、侵害の限度で効力を失うものと解されています。

 2 法定相続分

被相続人による相続分の指定がない場合には、民法の定める相続分が適用されます(民法900条)。そして、現在の民法の定める相続分の規定は、昭和56年1月1日以降に開始された相続について適用されます。

  (1)配偶者相続人の法定相続分

配偶者は、常に相続人となります(民法890条)。

なお、配偶者の法定相続分については、昭和55年の改正で相続分が拡張されました。また、現在、配偶者と死別した生存配偶者保護の観点から、配偶者に有利な方向で民法の相続法が改正される見込みです。

相続人 配偶者の相続分
1 配偶者と子 2分の1
2 配偶者と直系尊属 3分の2
3 配偶者と兄弟姉妹 4分の3

 

  (2)血族相続人の法定相続分

① 第1順位の血族相続人…子

② 第2順位の血族相続人…直系尊属

③ 第3順位の血族相続人…兄弟姉妹

注)片方の親のみ同じ兄弟姉妹の場合

半血の兄弟姉妹(死亡した被相続人と親の一方を共通にするだけの者)と全血兄弟姉妹とがいる場合には、半血兄弟姉妹の法定相続分は、全血兄弟姉妹の半分となります(民法900条4号ただし書)。

※全血兄弟姉妹・半血兄弟姉妹という概念は、兄弟姉妹の資格で相続する場合にのみ妥当することに注意が必要です。子の資格で相続する場合は、民法900条4号ただし書は無関係です。

 3 婚外子の相続分差別規定

最高裁で違憲決定(最高裁平成25年9月4日決定)が出され、相続分の差別規定は削除されました(民法900条4号ただし書前半部分)。

 

相続分の変動

   各共同相続人の具体的相続分は、相続財産に指定相続分・法定相続分を乗ずることによって最終的に確定されるわけではありません。相続分の放棄や譲渡によって変動することがあります。ここでは、相続分の変動について、ご説明いたします。

 1 相続分の放棄

  (1)手続

実務:本人の意思であることを明確化するため、本人の署名と実印の押印、印鑑登録証明書の添付を求められています。

  (2)効果

① 相続分の放棄は、相続の放棄と異なり、相続人としての地位を失うことはありません(→相続債務についての負担義務は免れない)。

② 相続分の放棄により他の相続人の相続分が変動します。

 2 相続分の譲渡

  (1)意義

遺産全体に対する共同相続人の有する包括的持分又は法律上の地位を譲渡することを「相続分の譲渡」といいます。

  (2)相続分の譲渡がなされるケース(当事者の整理)

多数当事者の事案において、相続分を譲渡することにより当事者を整理することができます。

  (3)効果

ア 譲受人の地位

相続分の譲渡がなされた場合、譲受人は譲渡人が遺産のうえに有する持分割合をそのまま承継取得し、遺産分割手続に関与することができます。

イ 譲渡人の地位

譲渡人は、排除の裁判により手続から脱退しますが、相続分の放棄の場合と同様、移転登記義務などを負うときは排除させず、形式的に当事者として残ることになります。

3 手続からの排除

  (1)意義

家裁は、当事者となる資格を有しない者及び当事者である資格を喪失した者を職権で調停手続から排除することができます(家事法258条、43条準用)。

※手続に関与したくない相続人は、相続分の譲渡又は放棄をしたうえで、その旨を家裁に届け出て、当該相続人を手続から排除する旨の決定を受けることにより、当該手続に関与しないでよいことになります。

  (2)手続

家裁は、排除する旨の決定をすることになります。

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