埼玉県行政書士会 狭山支部 改正相続法研修会で講師を担当しました⑤

【相続人以外の者の貢献を考慮するための方策-特別の寄与について】

1 改正の概要について

これまで、いわゆる寄与分は相続人にのみ認められていました。そのため、相続人の妻(例えば、長男の嫁など)が無償で被相続人(夫の父や母)の療養看護に努めた場合であっても、寄与分制度の評価の対象とはならず、遺産分割手続において相続人でない妻が寄与分を主張したり、あるいは、何らかの財産の分配を請求したりすることはできませんでした。

そこで、相続法改正に伴い、相続人以外の者の貢献を考慮するための方策として「特別の寄与」の制度が設けられました。改正のポイントは、以下のとおりです。

  • 相続人以外の被相続人の親族(例:相続人の妻等)が被相続人の療養看護等を行なった場合には、その者(特別寄与者)は、一定の厳格な要件を満たせば、相続人に対し、「特別寄与料」の請求をすることができるようになります。
  • ただし、特別寄与者は、相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、又は相続開始の時から1年以内に権利を行使しないと、その権利は時効で消滅してしまいます。
  • 当事者間の協議が調わないときは、相続人による寄与分の請求と同様、家庭裁判所に申立てをして、家裁で審理が行われ、最終的には、家裁が裁量により特別寄与料の有無や金額などを決定することになります。

 

 2 今後の実務への影響

もともと寄与分の主張が裁判所に認められるには、相当ハードルが高いとされてきましたが、それでも、これまでは、あくまで相続人間において、寄与分の主張や立証がなされ、相続人間のみで争われていました。その相続人間における相続争いに、相続人以外の特別寄与者の参加を認めることになり、相続をめぐる紛争がこれまで以上に、より一層、複雑化、長期化するおそれがあるのではないかと懸念されています。今後の実務においては、相続人だけでなく、相続人の配偶者などの特別寄与者の有無も含めて、複雑な相続争いに発展しないよう、事前に調査・調整することが必要となると考えられます。

この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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