他の人から遺産分割協議書の押印を求められた場合

遺産分割協議書の効力について

遺産分割協議書とは

故人が遺言書を遺していない場合、相続手続を進める際に必ず作成することが必要なものとして、遺産分割協議書が挙げられます。

遺産分割協議書とは、相続人の間で、どの遺産を、どのように分けるかを話し合った結果をまとめた書面です。

遺産分割協議書は、相続人全員が1人ずつ署名と実印を押すことで成立します。

>>遺産分割協議書の作り方の解説はこちら

 

遺産分割協議書の内容に納得していないのに押印してしまった事例

本来は、相続人間で話し合った遺産分割の内容に納得した上で、署名・押印を行うことになります。

しかし、

「遺産分割を早く終えたいのですぐに署名・押印した」
「他の相続人から強く求められたので、慌てて署名・押印してしまった」
「書面で司法書士や弁護士から署名・押印をするよう手紙が届いた」

など、内容をよく把握しないまま署名・押印をしてしまう方がいらっしゃいます。人によっては、「遺産の内容を知らされずに、兄から遺産分割協議書に署名・押印をしてほしい」と急に求められた脅迫に近い形で署名・押印をするよう責められた、などということもあります。

遺産分割協議書に署名・押印をすると…

しかし、遺産分割協議書に署名をし、実印を押してしまった場合、特殊な事情がある場合を除いて、いったん有効に成立した遺産分割協議を後から白紙撤回することは、極めて困難です。

そのため、不安なことや疑問があるのであれば、遺産分割協議書に署名・押印をする前に、必ず、相続案件を専門的に取り扱っている弁護士に相談することをお勧めいたします。

 

遺産分割協議が無効になる場合

前述のとおり、遺産分割協議書に署名・押印をしてしまった場合、遺産分割協議を後から白紙撤回することは、極めて困難です。

しかし、なかには遺産分割協議が無効となったり、取り消すことができる場合もあります。

下記に当てはまることが1つでもありましたら、当事務所に一度、ご相談いただければと思います。

・遺産分割協議が相続人の一部のみで行われていた場合
・認知症等で判断能力のない相続人がいた場合
・遺産分割協議の際、他の相続人により故意に遺産の一部が隠されていた場合
・遺産分割協議をやり直すことに相続人全員が合意した場合

署名・押印をした遺産分割協議が無効とされた事例

実際に、署名・押印をした遺産分割協議が無効になった事例をご紹介いたします。

相談内容

依頼者は、亡くなった父(被相続人)の長男で、相手方は二男であり、依頼者の弟でした。

父が亡くなった後、依頼者、弟及び母との間で、亡き父に関する遺産分割協議が成立しました。

もっとも、遺産分割協議の際、以下のようなやりとりがありました。

依頼者は、「将来母の相続が発生した時に母名義の土地を私が相続するが、この土地相続に対して一切対価を求めないことが条件」とし、弟に対し、遺産分割協議の場でこの考え方を提示しました。

これに対し、弟は、遺産分割協議の場において、依頼者が提示した条件を受け入れることに同意しました。

このようなやりとりを経て、依頼者は、弟の発言を信頼し、亡き父に関する遺産分割協議を成立させました。

にもかかわらず、弟は、母が亡くなったあとの遺産分割協議に際し、前言を翻し、父の遺産分割は終わったことであり、前述の条件を受け入れるという約束をしたことがないなどと言って、亡き母名義の不動産についても権利主張をしていて困っているとのことでした。

争点

本件の争点は、前述の遺産分割協議が依頼者の「錯誤」により無効であるか否かという点でした。

当事務所の弁護士の対応

前述のご相談を受けて正式に受任した当職は、弟を被告として、遺産分割協議無効確認請求訴訟を提起しました。

そして、本件で当職は、依頼者には

①いわゆる「動機の錯誤」があり、かつ、その依頼者の「動機」は被告である弟に表示されていること
②被相続人である亡き父に関する遺産分割にあたり、依頼者は、被告である弟よりも概算で650万円ほど実際の取得分が少なかったこと
③この他に、被告である弟の自宅の建築費用として亡き父から弟に対して計約2300万円の生前贈与がなされていたが、依頼者は、弟が前述の条件を受け入れること

を前提に、あえてこれを特別受益として考慮せずに遺産分割を成立させたことなどの事実から、もし、依頼者に錯誤がなかったら、少なくとも650万円以上は多くの財産を取得できるはずであったのだから、遺産分割協議も成立させなかったはずであると主張しました。

また、当職は、上記の当方の主張を裏付ける証拠による立証も積み重ねた結果、最終的には、裁判官に当方勝訴の心証をもっていただくことに成功し、裁判官の和解勧告により、当方の勝訴的和解が成立しました。

弁護士のコメント

本件では、緻密な理論構成と粘り強い立証活動により裁判官を説得することができたことが、当方の勝訴的和解に至った要因であったと考えています。

遺産分割協議書についてのお困りごとは早めに弁護士にご相談を

□遺産分割協議書に署名・押印を求められたが、内容に納得がいかない

□署名・押印をした遺産分割協議書の内容に問題があるので相談したい

こういったことでお悩みの方は、まずは弁護士に相談をしていただくことをおすすめいたします。

相続問題の解決実績の豊富な弁護士が相続問題を解決に導くサポートをさせていただきます。

当事務所では相続に関する初回相談は60分無料ですので、お気軽にご相談ください。

電話での相談予約は、04-2936-8666にお電話ください。

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この記事の執筆者

武蔵野経営法律事務所

弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官

加藤 剛毅

専門分野

相続、不動産、企業法務

経歴

埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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