遺産分割を放置しておくと大変なことに!

記事掲載日2020年9月8日

最新更新日2022年9月8日

ご家族やご親族が亡くなり、相続手続を進める中で、「遺産分割協議が進まない」という声を多くお伺いします。例えば、下記のような理由で遺産分割協議が進まない、ということはありませんか?

□相続人が多すぎて全員で話し合いができない
□疎遠な相続人がいて話し合いが進まない
□所在不明の相続人がいる
□認知症の相続人がいる
□被相続人と同居していた相続人が遺産の内容を開示してくれない
□不動産の価値が不動産を取得したい人の法定相続分を上回っているので、他の相続人が納得しない
□「特別受益」を主張する相続人がいる
□「寄与分」を主張する相続人がいる
□被相続人の預貯金を使い込んだと思われる相続人がいるが、その本人は使い込みを認めない

上記のような理由で、相続の手続遺産分割協議が止まってしまっているということがおありかと思います。

しかし、この「遺産分割協議」が終わっていないと、相続手続を終わらせられないことによって不利益を被る可能性があります。

また、その時に遺産分割協議をまとめず、相続手続をしなかったことで、次の相続が発生(つまり遺産分割協議を放置しているあなたが亡くなったあと)してしまい、そのことがさらなる相続トラブルの原因のひとつとなり、ご家族の縁が切れてしまうような壮絶な相続争いに発展してしまう可能性もあります。

では、具体的にどのような不利益が発生しうるのでしょうか。

遺産分割協議を放置していた場合に起こりうる不利益やトラブルについて

1、銀行から預貯金の払戻しを受けることができなくなる可能性がある

遺産分割を放置していると銀行から預貯金の払戻しを受けることができなくなる可能性がある故人が亡くなると、銀行などの金融機関の預貯金口座は引出しができなくなります。これを預貯金口座の凍結といいます。

故人が遺言書を遺していない場合、預貯金口座の凍結を解除し、預貯金を全額払い戻すためには、相続人間で遺産分割協議が成立している必要があります。逆に言えば、遺産分割協議が終わっていないと、故人が保有していた銀行の預貯金を全額払い戻すことができません。

※なお、令和元年7月1日から、民法改正により、遺産分割前の預貯金の一部払戻しが認められることになりました。

相続人間で合意した事項をまとめ、相続人全員の署名・実印が押印された「遺産分割協議書」をはじめとする各書類がそろっていないと、預貯金を全額引き出すことができず、相続手続が滞ってしまいます。そのため、葬祭費用や当面の生活費等を取得することができないという不利益を被ることになります。

2、相続税申告時に、配偶者控除などの税控除特例が使えなくなってしまう

遺産分割を放置していると相続税申告時に、配偶者控除などの税控除特例が使えなくなってしまう相続税申告の際に、例えば「配偶者控除」「小規模宅地の特例」のような、一定の特例を用いて相続税額を低く抑えることが可能なのですが、この特例は対象の財産を誰が相続するのかどのように分けるかが決まっていないと適用できません。

遺産分割協議が調っていない段階では、「とりあえず法定相続分で相続したもの」と仮定して計算した額で相続税を申告し、金銭による相続税の一括納付を行わなければなりません。

この申告の際に「遺産分割協議を3年以内に終わらせる」旨を届け出ることで、遺産分割協議を行なった後に、特例等を適用した正式な額を計算しなおして多く納めた分は還付してもらうことができるのですが、それでも一時的に税額を負担する相続人がでてきてしまいます。

この負担をする人や負担後の相続税の負担割合を相続人間で調整しようとするとこれまた手間になるでしょう。

ですので、相続税申告の期限である相続発生後10か月後までに遺産分割協議を完了しておいたほうがトラブルになるリスクを減らすことができますし、相続税申告自体もスムーズに進められます。

3、不動産が相続人間の「共有」になるため、売却や賃貸などが困難になってしまう

遺産分割を放置していると不動産が相続人間の「共有」になるため、売却や賃貸などが困難になってしまう故人の名義の不動産は、相続が開始すると相続人全員の「共有」になります。遺産分割協議をせず、「共有」のままにしておくと、不動産の売却をするには共有者である相続人全員の同意が必要となり、不動産を賃貸するには共有者の持分の過半数の同意が必要になります。

さらに、そのまま放置しておくと、「数次相続」が発生し、より複雑な共有状態になってしまいます。

「数次相続」とは、最初に亡くなった人の遺産が遺産分割協議を経て分割されないまま相続人が亡くなってしまい、最初に亡くなった人の遺産を次に亡くなった相続人の相続人において遺産分割協議をしなければならない状態のことを指します。

このような数次相続が起こるたびに当事者は増えていく可能性があります。

実家の売却を考えたとき、共有状態では共有者全員の同意を必要としますから、面識がない・連絡が取れないなど、スムーズに進まないことは容易に予測できるでしょう。そのため、遺産は放置せずに分割協議をするべきですし、協議ができないなら調停や審判を利用してでも遺産分割をするべきなのです。

4、場合によっては法改正によって法定相続分などのルールが変わる可能性がある

遺産分割を放置しているうちに場合によっては法改正によって法定相続分などのルールが変わる可能性がある法律は、その時代に沿った形に改正される場合があります。相続に関する法律のひとつである民法の改正によって、法定相続分などの相続に関するルールが変わる可能性が今後もあり得ます。

実際に、昭和55年までと昭和56年以降では配偶者の法定相続分が異なる扱いになっていたり、さらに前の昭和22年5月2日までは家督相続制度が残っており、家督を相続する男性の長子(つまり長男)が全てを相続する扱いになっていたりします。また、法定相続分の変更はありませんでしたが、ここ数年も民法が改正されております。

そのため、遺産分割協議を放置し続けると、相続のルールが民法等の改正によって変わってしまい、改正前にもらえると思った相続分がもらえない、という事態に発展し、それが元でトラブルになってしまうリスクもはらんでいます。

5、相続した不動産の登記が義務化されます

所有者不明土地の問題を解消するため、2024年4月1日から「相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内」に相続した不動産の名義変更をしなければなりません。遺産分割によって不動産の所有権を取得する場合には、「遺産分割が成立した日から3年以内」に相続登記を済ませなければならないということです。

いままで相続登記を放置していた人は、

  • 不動産の価値が低い
  • 相続人間で話し合いがまとまらない
  • あ相続人に行方不明(音信不通)の人がいる

など様々な理由で放置していたようです。

しかし、今後は正当な理由が存在しなければ、相続により取得した不動産を3年以内に登記しなかった場合、10万円以下の過料が科される可能性があります。

正当な理由は、下記のケースのみに認められています。

①数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース

②遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース

③申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース

④登記簿は存在しているものの、公図が現況と異なるため現地をおよそ確認することができないケース法務省|法制審議会-民法・不動産登記法部会|資料19

不動産の遺産分割協議は難航するケースも珍しくないため、定められた期間内に登記できない可能性が高いかもしれません。もし現在、亡くなられたご先祖様の名義のままで名義を変えないままになっている土地をお持ちの方がおられましたら、お早目に弁護士にご相談いただくことをお勧めします。

遺産分割協議の段階で弁護士に交渉をご依頼いただくことで、 比較的短期間に解決できる可能性が高まります。 あなたの貴重な時間が奪われずに済み、また、ご家族・ご親族間の関係性も悪化させずに済むこともあります。

6、遺産分割協議が長引き相続税申告が間に合わない

相続税の申告期限は、被相続人が死亡した事実を知った日の翌日から10か月以内となっています。相続税申告が間に合わないと「無申告加算税」や「延滞税」等のペナルティーが科されます。しかし、遺産分割協議で揉めることは多く、思い通りに全て分割協議が前に進むとは限りません。

また、相続税の申告のためには相続人の調査や相続財産の調査が不可欠です。その際は、戸籍謄本を収集・調査をすることに加えて、不動産や預貯金、株式や保険等の調査をしなければなりません。相続税の申告期限というタイムリミットがある中で、これらの作業をご自身で行うことは、心理的にも時間的にもご負担となるかと思われます。

したがいまして、遺産分割を適切かつ迅速に行うことが、税務面においても、相続の手続を円滑に進める第一歩であり、そのためにも、早期に、遺産分割手続に精通した弁護士に相談をすることが重要です。

遺産分割協議が進まない状況を打開するためには

遺産分割協議が滞る前に弁護士に無料相談上記のような不利益やトラブルのリスクを回避するためにも、遺産分割協議は放置せず、できる限り早めに進めるべきでしょう。では、具体的にはどうすればよいのでしょうか。

遺産分割協議が進まない状況を打開するためには、まずは相続問題に詳しい弁護士にご相談の上、どのような方針で進めていくのかを決定していくべきでしょう。

故人の死後、相続人が誰なのか、相続財産には何がどのくらいあるのか、全く把握されないで放置している場合は、まずは相続人の調査相続財産の調査を弁護士に依頼しましょう。

調査の結果、少しでも相続トラブルの可能性があれば、弁護士に遺産分割協議の交渉の代理を依頼することをお勧めします。

故人の死後、例えば「他の相続人と疎遠で連絡を取るのが面倒だ」「相続人が遠方に散らばってしまい、連絡が難しい」など、相続人との連絡が取れない場合や「遺産分割協議書案を作ってもらったが他の相続人が納得せず、押印してもらえない」「以前の相続の際に不動産の名義変更がされていないため、権利関係が複雑になっている」など、遺産分割協議自体が滞ってしまっている場合は、弁護士があなたに代わって遺産分割協議の交渉の代理を実施し、場合によっては遺産分割調停の申立てをして、調停での解決を目指します。

あなたのご希望になるべく沿う形での解決を目指します。まずは、当事務所の弁護士にお気軽にご相談ください。

遺産分割は早めに弁護士にご相談を

□相続人が多すぎて全員で話し合いができない
□疎遠な相続人がいて話し合いが進まない
□所在不明の相続人がいる
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□「特別受益」を主張する相続人がいる
□「寄与分」を主張する相続人がいる
□被相続人の預貯金を使い込んだと思われる相続人がいるが、その本人は使い込みを認めない

弁護士に相続の無料相談こういったことでお悩みの方は、まずは弁護士に相談していただくことをおすすめいたします。相続問題の解決実績の豊富な弁護士が長期間放置していた相続の問題を解決に導くサポートをさせていただきます。

当事務所では相続に関する初回相談は60分無料ですので、お気軽にご相談ください。無料相談のお申込みはお電話または問い合わせフォームより受け付けております。

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この記事の執筆者

武蔵野経営法律事務所

弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官

加藤 剛毅

専門分野

相続、不動産、企業法務

経歴

埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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