弁護士に依頼すべき相続放棄とは?相続財産管理人選任の申立て

亡くなった人が相続財産を残していた場合、それを管理する人がいなくてはなりません。
しかし、亡くなった人に身寄りがないケースや、相続人となる権利を持つ人はいるものの全員が相続を破棄してしまったケースでは、相続財産を管理する人がいなくなってしまいます。

このような状態はよくありません。なぜなら、被相続人の債権者である相続債権者や、遺言によって遺贈を受けた受遺者は相続財産からの支払いを受けることができずに、相続財産が不当に失われることや、隠されてしまう危険もあるからです。

このように相続人がいないことに伴う不都合があるときには、利害関係人から申立てを行い、家庭裁判所に「相続財産管理人」を選任してもらい、相続財産管理人が相続財産を管理し清算するという職務を行うことになります。

なぜ相続財産管理人を選任するの?

相続財産管理人を選任すべきケースは基本的には以下の2種類です。

 相続人がいるかどうかわからない場合
 相続人全員が相続放棄をした場合

このうち、実際に相続財産管理人の選任申立てがされるのは、相続人全員が相続放棄をした場合が多いです。

しかし、実は、相続放棄をしたからといって、直ちに遺産の管理義務までなくなるわけではありません。

相続放棄をした人は、相続財産が適切に管理されるようになるまで、自分の財産と同一の注意義務をもって遺産を管理する義務を負うのです(民法940条)。

つまり、相続放棄をした者は、次の管理者が現れるまでは、相続財産の管理を続けなければなりません。

このため、相続財産管理人が選任されたら財産を引き渡すことができ、相続財産管理人が相続財産を管理することになるので、相続放棄をした人が財産管理義務から解放されます。

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相続財産管理人の選任方法とその流れ

次に、相続財産管理人の選任方法を説明します。

選任方法

① 相続財産管理人の選任の申立て

相続財産管理人を選任するには、被相続人の最終の住所地を管轄する家庭裁判所に対し、相続財産管理人の選任申立てをします。そのためには、相続財産管理人の選任申立書を作成して必要額の収入印紙を貼付します。

そして、必要書類を用意して、予納郵便切手を添えて、家庭裁判所に提出します。

参考:裁判所|相続財産管理人の選任の申立書
https://www.courts.go.jp/saiban/syosiki/syosiki_kazisinpan/syosiki_01_15/index.html

申し立てができる人

 利害関係人(※債権者や特別縁故者、特定遺贈によって遺贈を受けた受遺者など)
 検察官

必要書類

 被相続人が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本
 被相続人の父母が生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本
 被相続人の子どもや孫で死亡している人がいる場合、その子どもや孫の生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本
 被相続人の直系尊属(親など)の死亡が記載されている戸籍謄本
 被相続人の兄弟姉妹のうち、すでに死亡している人がいる、その兄弟姉妹の生まれてから死亡するまでのすべての戸籍謄本
 代襲者としての甥や姪で、すでに死亡している人がいる場合、その甥や姪の死亡が記載されている戸籍謄本
 被相続人の住民票除票又は戸籍附票
 財産目録
 財産を証明する資料(※不動産登記事項証明書、固定資産評価証明書、預貯金通帳の写しなど)
 申立人において被相続人との利害関係を証する資料
 相続人全員が相続放棄をした場合は相続人全員の相続放棄申述受理証明書
 その他

② 審理を受ける

書類が提出されると、家庭裁判所によって相続財産管理人が必要であるかが審理されます。

③ 相続財産管理人の選任

このようにして、申立人が相続財産管理人の選任を受ける必要があると認められれば、家庭裁判所は相続財産管理人を選任するという審判を下します。

選任後の流れ

① 相続財産管理人の選任を官報公告する

家庭裁判所が相続財産管理人を選任すると、その後相続財産管理人を選任したことを知らせる公告を官報への掲載などによって行います。
そのために、官報公告費用として3,775円が必要です。

② 相続財産の調査と管理

相続財産管理人が選任されると、まずは相続財産を調査し、財産目録を作成します。

不動産があれば、原則として、名義変更をしますし、預貯金の有無の調査や公共料金の支払いをすることもあります。預貯金や生命保険などは解約して相続財産管理人名義の口座に入金します。

③ 相続債権者と受遺者に対する請求申出の公告

①の公告が行われてから2か月以内に相続人が現れない場合には、相続財産管理人は、被相続人の債権者である相続債権者と、遺言によって遺贈を受けた受遺者に向けて、一定期間内に請求の申し出や債権の届出の催促として、官報に公告を掲載します。

相続債権者と受遺者への請求申出の公告(と個別の連絡)によって届出を行なった債権者と受遺者に対して、相続財産の換価が完了したあと、それぞれの債権額の按分割合で相続財産管理人が支払いを行います。

もし、請求申出の公告をしても期間内に届出が行われず、相続人もいない場合には、家庭裁判所へ相続人捜索の公告の申立てを行います。この際、債務超過であることが明らかな場合には、相続人捜索の公告の申立ては行いません。

それでも相続人が現れない場合には相続人の不存在が確定し、特別縁故者から相続財産分与の申立てがなされれば、家庭裁判所の審判により、特別縁故者に対して相続財産の分与がなされます。

④ 相続財産管理人に対する報酬

相続財産管理人の職務が終了すると、自ら家庭裁判所へ報酬付与の申立てを行います。報酬に明確な基準はありませんが、事案の難易度や相続財産管理人の行なった仕事の内容などによって金額を決めます。

⑤ 残余財産の国庫帰属

相続財産管理人が報酬を受け取ったあと、さらに財産が残っている場合には、その残った相続財産は国のものになります。

⑥ 管理業務終了の報告

まとめ

以上のように、相続放棄をしたものの、相続財産に不動産があり管理義務を免れない場合は相続財産管理人の選任が必要となりますが、相続財産管理人の選任の申立てには、たくさんの必要書類が要りますし、選任後の手続が非常に複雑になります。

このような場合には、ご自身では適切に対処することができないことも多いと思われますので、まずは弁護士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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この記事の執筆者

武蔵野経営法律事務所

弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官

加藤 剛毅

専門分野

相続、不動産、企業法務

経歴

埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

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