財産目当てで高齢の親を「囲い込み」…親族との面会妨害?やった者勝ち?

父親の預貯金が兄嫁に使い込まれている?

私は実際に、囲い込みの事案の依頼を受けたことがあります。

依頼者は60代の男性でした。

依頼者によれば、実家に住む認知症の父親の財産が、父親と同居する亡き兄の嫁家族に使い込まれているようだとのことでした。

父親が認知症の診断を受けていたことは判明していたので、その財産を保全するため、家庭裁判所に後見人選任の申立てを行いました。

後見人選任の申立てをしたものの…

案の定、囲い込みをしている親族が後見人の選任に反対したため、後見人の選任に必要な医師の診断書を取得することができませんでした。これは当初から想定された事態でした。

そこで、依頼者の父親が入所している福祉施設に依頼者と一緒に赴き、父親を連れ出してその足で病院に行き、家庭裁判所に提出するための「後見開始相当」との医師の診断書を取得しようと計画していました。

施設に赴いたところ父親は?

そして、計画決行の日、私は、依頼者に同行し、父親が入所している施設に赴き、父親との面会を求めました。

すると、何と、父親はその前日の夜に、兄嫁に連れ出されて実家に帰宅してしまっていたことが判明しました。これを知った依頼者は激怒しました。

私は、実家に殴り込みにいこうとする依頼者を必死で静止し、その日は失意のうちに、帰路につきました。

計画が事前に漏れていた?…犯人は?

あとで聞くと、実は、依頼者が、数日前に、味方だと思っていたお姉さんにその計画を話してしまっていたことが判明しました。どうやら、味方だと思って信頼していたそのお姉さんから相手方に計画が事前に漏れたようでした。

後見人はどうなる?

その後、私から施設側に対し、父親の看護記録等を開示するよう要請しましたが、兄嫁の意を受けた施設側の協力も得られなかったため、「後見開始相当」との医師の診断書が提出できず、審理は難航しました。

ところが後日、囲い込みをしている兄嫁にも弁護士が代理人に就いたため、その代理人と粘り強く協議した結果、その協力を得て、医師の診断書を家裁に提出し、後見人(利害関係のない弁護士)の選任に漕ぎ着けることができました。このため、少なくとも、後見人選任後は財産の保全をすることができました。

その後、父親がお亡くなりになると、遺産分割調停をすることになりましたが、やはり、父親の生前の預貯金の使い込みが問題となり、調停は大変紛糾しました。

この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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