【相続解決事例】生命保険金は「遺産」ではない?

相談から遺産分割調停の申立てへ

依頼者は50代の男性でした。

亡き父を被相続人とする遺産分割協議において、他の相続人である亡き父の再婚相手である継母と弟との協議が決裂したとのご相談でした。

そこで、私が正式に代理人として受任し、遺産分割調停の申立てを行うことにしました。

遺産分割調停中に継母が…

調停では、亡き父の生命保険金の受取人であった継母が受け取った保険金の額が比較的高額だったため、この点が争点の一つとなりました。

これについては、生命保険金は民法上の「相続財産(遺産)」ではないので、本来、遺産分割の対象ではないのですが、保険金の額が高額な場合に例外的な取扱いを認めた「生命保険金についての最高裁判例」を引用して、特別受益に準ずるものと主張(つまり、「継母が受け取った保険金の額を遺産に加算せよ」との主張)しました。

また、依頼者の弟にも別の代理人が就いていたのですが、このときは、継母が受け取った生命保険金の扱いについて、当方と足並みをそろえて同じ主張をしていました。

ところが、その後、調停手続中に継母が亡くなっていまい、継母と養子縁組をしていた依頼者の弟が継母の地位を承継することになったのです。

弟が態度を一変

すると、依頼者の弟は、継母の生前は当方と足並みをそろえて同じ主張をしていたにもかかわらず、継母が亡くなり、その地位を承継するや否や、今度は一転して、生命保険金は遺産ではないから特別受益に準ずるものとみることはできないと主張し、これまでの自らの主張を翻したのです。

この豹変ぶりにはさすがに依頼者も激怒したので、代理人である私としても、依頼者のお気持ちを酌み、弟の主張に対し、これまでの自らの主張を翻すのは「信義則」違反だから許されないと強く反論しました。

結果

その結果、裁判所から一定の理解を得ることができ、最終的に、継母が受領した生命保険金のうちの一定額(半額程度)を持戻しの対象として遺産に加算し、依頼者の取り分を多くする内容で遺産分割調停を成立させることができました。

解決のポイント

本件では、最高裁判例を引用したうえ、粘り強く主張を展開した結果、裁判所から一定の理解を得ることができたのがポイントでした。依頼者の取り分を上乗せすることもでき、納得のうえでの解決に至って何よりでした。

この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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