特定の相続人が被相続人の生前に被相続人の預貯金を使い込んでいた事例

このようなトラブルも、最近、数多くご相談いただいています。

とあるご相談者によれば、父親が亡くなり、相続人はきょうだい二人(妹)だけなのですが、司法書士及び税理士の関与のもと、遺産分割協議を成立させたあと、他方のきょうだい(妹)が、被相続人の生前に多額の預貯金を引き出していたと思われることが判明し、一定の金額を返還してほしいというご相談内容でした。

そこで、遺産分割協議は有効であることを前提に、本来であれば、遺産分割協議の際に多額の引出しの事実が明らかになっていれば、分割協議の際に考慮できたはずであったにもかかわらず、他方の相続人(妹)がそのことを隠していたため、分割協議で考慮できなかったということで、他方の相続人に対し、不当利得返還請求訴訟を提起することで受任しました。

訴訟提起後、他方の相続人(妹)は、被相続人からの生前贈与を主張しましたが、もし、そうであれば、遺産分割協議の際に特別受益として考慮すべきであったのに、それが考慮されずに分割協議を成立させながら、今になってそのような主張をすることは、信義則違反として許されるべきではないとの主張を展開し、双方、主張・立証を尽くした結果、裁判官から和解勧告があり、最終的には、相手方が一定額の和解金を支払うことで和解が成立しました。

本件では、途中から紛争性が顕在化したにもかかわらず、遺産分割協議の際に弁護士が関与していなかったため、その後の紛争に発展したと考えられることから、遅くとも紛争が顕在化した段階で、弁護士が遺産分割協議に関与すべきであったと考えます。

そうすれば、遺産分割協議の際に特別受益の存在も明らかとなり、その存在を考慮した内容の分割協議を成立させることができ、その後の無用な訴訟を争う必要もなかったと思われます。

したがいまして、当初は争いがなかったとしても、いつ、紛争性が顕在化するかわかりませんので(紛争案件を扱えるのは弁護士だけです)、相続問題は、できるだけ早めに、弁護士に相談することをお勧めいたします。

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この記事の執筆者

武蔵野経営法律事務所

弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官

加藤 剛毅

専門分野

相続、不動産、企業法務

経歴

埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は250件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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