家裁の審判に納得がいかずに抗告をした結果、高裁で家裁の判断を覆した事例
相談に至った経緯
依頼者は、80代の女性(母親)と50代の女性(娘)でした。
依頼者らによれば、夫(父)がお亡くなりになり、相続人は、依頼者である妻と長女と相手方である二女の3名でした。依頼者らによれば、夫(父)が亡くなった後、二女との間で話し合いをしたが、協議がまとまらなかったため、二女が弁護士に依頼して調停の申立てをされ、調停不成立で審判手続に移行し、最終的に家裁から出された審判に納得がいかないとのことで、高裁への抗告事件として受任することになりました。
争点
争点は色々ありましたが、主な争点は、亡くなった夫から妻である依頼者に対する不動産の生前贈与が特別受益に当たるとしても、黙示の持戻し免除の意思表示が認められるか否かという点でした。これに対し、家裁は、依頼者の主張を斥け、相手方の主張を採用して、黙示の持戻し免除の意思表示は認められないとして、具体的相続分が算定され、妻である依頼者にとって極めて酷な内容の審判が出されていました。
当事務所の対応・結果
そこで、私が抗告事件として受任し、抗告理由書の中で本件と関連する裁判例等を複数引用しつつ、妻である依頼者が、亡くなった夫に対し、長年にわたり献身的に尽くしてきたことや被相続人の生前の意思など、黙示の持戻し免除の意思表示の存在を推認させる重要な間接事実を丁寧に主張・立証しました。
このように、高裁において粘り強く主張・立証を補充した結果、高裁は、家裁の判断は誤りであり、妻である依頼者の長年にわたる献身的な貢献や被相続人の生前の意思を最大限考慮し、黙示の持戻し免除の意思表示を認定して家裁の審判を変更し、ほぼ、当方の主張どおりの判断を出してもらうことができました。
担当弁護士のコメント
本件では、家裁で納得のいかない不当な審判が出されてしまったとしても、諦めずに高裁に抗告し、粘り強く主張・立証を補充することで家裁の誤った判断を覆すことができるということを改めて経験し、依頼者にとっても大変満足のいく結果となり、私自身にとっても自信につながるものとなりました。
この記事の執筆者
-
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。
最新の投稿
- ②特別受益2024.06.28家裁の審判に納得がいかずに抗告をした結果、高裁で家裁の判断を覆した事例
- ①不動産の評価額2024.05.09後妻との間で不動産の評価額及び金銭等出資型の寄与分の有無・金額が争点となった事例
- その他2023.10.12家裁の審判に納得がいかずに抗告をした結果、高裁で家裁の判断を覆した事例
- ①不動産の評価額2023.06.30粘り強い交渉により比較的早期に解決できた事例
②特別受益の最新記事
その他の最新記事
その他の最新記事
相続解決事例の最新記事
- 後妻との間で不動産の評価額及び金銭等出資型の寄与分の有無・金額が争点となった事例
- 家裁の審判に納得がいかずに抗告をした結果、高裁で家裁の判断を覆した事例
- 粘り強い交渉により比較的早期に解決できた事例
- 事前の財産調査に基づき比較的早期に交渉により解決した事例
- 相続人の一人が認知症だったため遺産分割協議は無効?
- 不本意な遺産分割審判に対して抗告したところ高裁で主張が認められた事例
- 相続人が海外に?貸金庫を開けてみると…
- 【相続解決事例】生命保険金は「遺産」ではない?
- 大正時代に亡くなった曾祖父名義の土地を相続
- 財産目当てで高齢の親を「囲い込み」…親族との面会妨害?やった者勝ち?
- 相続財産調査で多くの遺産が判明~その後の調停で多額の代償金を獲得
- 一審で敗訴した遺言無効確認訴訟を控訴審から受任して逆転勝訴した事例
- 先妻の子と後妻との間の対立事例(寄与分の問題)
- 他の相続人から提起された遺産分割協議無効確認訴訟に勝訴!反対に、その相続人に対して遺留分請求訴訟を提起した事例
- 兄弟間の骨肉の争いのため最終的な解決までに5年も要した事例
- 他の相続人の所在が不明で連絡がとれないとのことで遺言執行の代理業務を受任した事例
- 姉に対して遺留分を請求したうえで、協議により、比較的早期に解決した事例
- 一部の相続人の所在と遺産の全容が不明で、一部の相続人の所在調査及び遺産調査をしてから遺産分割協議にて解決した事例
- 最初は行政書士に依頼された遺産分割協議書を途中から依頼を受け分割協議を成立させた事例
- 特定の相続人が被相続人の生前に被相続人の預貯金を使い込んでいた事例
- 亡くなった母親の異父きょうだいらに対する遺留分請求の事例
- 相続人のうちの一人が認知症のため家裁に成年後見人を選任してもらい、その後、遺産分割協議を成立させた事例
- 相続人のうちの一人が所在不明のため、家裁に不在者財産管理人を選任してもらったうえで、遺産分割調停が成立した事例
- 所在不明の相続人の所在調査をした結果、所在が判明し、遺産分割協議が成立した事例
- 亡くなった父親の遺産分割をめぐり、母親と実兄との間で感情的な対立に至ってしまった事例
- 納得できない遺言が出てきた事例
遺産分割の最新記事
- 後妻との間で不動産の評価額及び金銭等出資型の寄与分の有無・金額が争点となった事例
- 家裁の審判に納得がいかずに抗告をした結果、高裁で家裁の判断を覆した事例
- 粘り強い交渉により比較的早期に解決できた事例
- 相続人の一人が認知症だったため遺産分割協議は無効?
- 不本意な遺産分割審判に対して抗告したところ高裁で主張が認められた事例
- 相続人が海外に?貸金庫を開けてみると…
- 【相続解決事例】生命保険金は「遺産」ではない?
- 大正時代に亡くなった曾祖父名義の土地を相続
- 相続財産調査で多くの遺産が判明~その後の調停で多額の代償金を獲得
- 先妻の子と後妻との間の対立事例(寄与分の問題)
- 兄弟間の骨肉の争いのため最終的な解決までに5年も要した事例
- 一部の相続人の所在と遺産の全容が不明で、一部の相続人の所在調査及び遺産調査をしてから遺産分割協議にて解決した事例
- 最初は行政書士に依頼された遺産分割協議書を途中から依頼を受け分割協議を成立させた事例
- 相続人のうちの一人が認知症のため家裁に成年後見人を選任してもらい、その後、遺産分割協議を成立させた事例
- 相続人のうちの一人が所在不明のため、家裁に不在者財産管理人を選任してもらったうえで、遺産分割調停が成立した事例
- 所在不明の相続人の所在調査をした結果、所在が判明し、遺産分割協議が成立した事例
- 亡くなった父親の遺産分割をめぐり、母親と実兄との間で感情的な対立に至ってしまった事例