不本意な遺産分割審判に対して抗告したところ高裁で主張が認められた事例

相談に至った経緯

依頼者60代の男性でした。

遠方に居住している実家の父親が亡くなり、他の4人のきょうだいとの間で遺産分割協議がまとまらないというご相談でした。特に、

①長兄との感情的な対立が激しいこと、

②遺産は多数の不動産とわずかな預貯金でしたが、誰がどの不動産を取得するのか、どの不動産を売却するのか、という遺産の具体的分割方法をめぐってそれぞれの主張が対立していたことから、

協議による解決は困難であると判断し、遺産分割調停の申立てをすることになりました。

遺産分割調停の段階

調停申立て後、遺産の範囲及び遺産の評価額については比較的早期に確定しましたが、やはり、誰がどの不動産を取得するのか、あるいは、どの不動産を売却するのか、という遺産の具体的分割方法をめぐって協議が紛糾しました。

調停の段階で、当方は、当初、遺産たる不動産の現物の取得を希望し、具体的分割案について提案したことがありましたが、相手方らの反対のため、この提案が実現することはありませんでした。

このため、当方としては、現物分割及び代償分割のいずれも困難であれば、換価分割による他ないと考え、その旨主張するに至ったという経緯がありました。

もっとも、調停ではどうしても話合いがまとまる見込みがなかったため、調停は不成立となり、審判手続に移行しました。

遺産分割審判の段階

しかし、家裁の審判は、上記のような経緯があったにもかかわらず、遺産分割の方法として、現物分割が原則であることを理由に、相手方である長兄が取得を希望する不動産のほとんど全てについて、同人が取得することを認めてしまったのです。他方、当方依頼者を含む他の相続人は、長兄が取得した不動産以外の残りの不動産を競売手続により売却・換価して法定相続分で分配するという結論でしたが、当方依頼者らにおけるその後の競売手続の負担等を考慮すると、あまりに不公平な内容でした。

そこで、当方依頼者と協議した結果、家裁の審判を不服として、高裁に抗告の申立てをしました。

抗告審での主張

抗告審での当方の主張は、あくまで現物分割が原則的分割方法であることを前提としたうえで、その後の競売手続における多大な負担等を考慮した結果、遺産たる不動産のうち、一部の不動産の現物取得を希望するという内容でした。

この点、原審判の認定によれば、当方依頼者及び相手方らの具体的取得分はそれぞれ約3643万円であるところ、当方依頼者が取得を希望する不動産の評価額の合計は、約3226万円であったため、具体的取得分の範囲内の金額でした。

また、長兄以外の相手方ら3名は本件遺産のうち特に取得を希望するものはない旨明言していましたから、もともと不動産の換価分割を希望していた相手方らにおいては、長兄及び当方依頼者が取得する不動産以外の不動産について、換価分割の方法による分割をするのが相当であると考えられました。

以上のように主張したところ、高裁(抗告審)では、原審判の結論が変更され、当方の主張を認めてもらうことができました。

担当弁護士のコメント

この事案では、家裁において審判が出されたとしても、その内容に不服がある場合、諦めずに高裁に抗告をすれば、内容が合理的である限り、十分認めてもらえる可能性があるという教訓になりました。

この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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