粘り強い交渉により比較的早期に解決できた事例

相談に至った経緯

依頼者は、50代の男性でした。 依頼者によれば、お父様がお亡くなりになり、相続人は、お母様とお姉様と長男であるご本人の3人でした。依頼者によれば、お父様がお亡くなりになった年の夏に相続人3人で話し合いをした際、書面は作成していないものの、口頭で合意ができたとおっしゃっていました。お母様は長男である依頼者に全て任せるとのご意向でしたので、主に依頼者とお姉様とが対立しており、お姉様が弁護士を代理人に就けたことから、交渉案件として受任することになりました。

当事務所の対応

本件では、 ①遺産の範囲(具体的には相続開始後に依頼者が被相続人名義の預貯金口座から葬儀費用等に充てるために預貯金を引き出していたことが判明したことから、その取扱いをどうするかという点)、 ②遺産の評価額(遺産たる不動産の評価額)、 ③特別受益の有無及び ④具体的分割方法 の4点が争点でした。 そこで、それぞれの争点ごとに、私が、代理人として相手方代理人と交渉を進めました。

①遺産の範囲

①の争点については、使途が葬儀費用等であったことから、交渉の結果、直近の残高ではなく、相続開始時の残高をベースにすることで合意することができました。

②遺産の評価額

②の争点については、双方の主張額に開きがありましたが、相手方が提示してきた不動産業者の査定書には前提となる事実関係に誤りがあったことから、当方がその点を指摘したところ、ほぼ当方の主張額に近い金額を評価額とすることで合意することができました。

③特別受益の有無

③の争点については、双方に相応の生前贈与があったことから、被相続人には持ち戻し免除の意思があったものと推認されると主張したところ、相手方も当方の主張を受け入れ、お互いに特別受益は考慮しないことで合意することができました。

④具体的分割方法

最後に、④の争点について、相手方が当初の口頭による合意内容とは異なる分割案を提案してきたため、当方依頼者は、当初の口頭による合意に拘っていたことから相手方の提案に難色を示しましたが、最終的には、早期解決の観点から、具体的分割案についても合意することができました。

担当弁護士のコメント

本件は、交渉の途中で相手方が入院してしまい、しばらくの間連絡が取れなくなったり、お墓の問題等本題の遺産分割とは直接関係ない付随的な問題をからめてきたりと紆余曲折があったため、交渉の当初より遺産分割調停の申立てをすることも検討していましたが、最終的には、調停の申立てをすることなく、交渉により分割協議を成立させることができ、何よりだったと思っています。

この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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