家裁の審判に納得がいかずに抗告をした結果、高裁で家裁の判断を覆した事例
相談に至った経緯
依頼者は、70代の男性でした。 依頼者によれば、お兄様(次兄)とお姉様(長女)が相次いでお亡くなりになり、亡くなったお兄様にもお姉様にもお子さんがいなかったことから、相続人は、長兄と既に亡くなった三男の息子(代襲相続人)、その他に、異父きょうだい3名の計6名でした。依頼者によれば、お兄様とお姉様が亡くなった後、相続人間で話し合いをしたが、協議がまとまらなかったため、調停の申立てをしたいとのことで、受任することになりました。
当事務所の対応
亡くなったお兄様の遺産分割
亡くなったお兄様の遺産は、預貯金と有価証券のみでしたので、依頼者が全財産を取得する代わりに、他の相続人に対し、その法定相続分に応じた代償金を支払うという内容で、比較的早期に解決しました。
亡くなったお姉様の遺産分割
他方、お姉様の遺産分割については、依頼者は、お姉様が亡くなった後の相続人間の話し合いにおいて、特に長兄から、お姉様が所有していた都内の不動産についての相続分を放棄するよう強く迫られました。その結果、依頼者は、長兄の圧力に屈し、意に反する内容(「自分は四男で不動産を守っていくことができないので、不動産の分与を放棄する」という内容)の書面を作成させられてしまいました。 調停では、依頼者が半ば強引に作成させられたこの書面の法的性格をめぐって争いになりました。 相手方らは、この書面は文字通り、依頼者が、不動産についての相続分を放棄したものと考えるべきで、不動産については、依頼者以外の他の相続人らにおいて換価分割をし、その他の流動資産については、依頼者も含む法定相続人全員で法定相続分に応じて分割するという内容の分割方法を主張しました。 これに対し、当方は、上記書面は、依頼者がそのような一方的に多大な不利益を被る遺産分割をする動機も合理的理由も存在しないから、単に不動産の現物取得を希望しないことを表明したにすぎず、不動産については、依頼者以外の他の相続人らで分割してもらい、依頼者は、不動産以外の流動資産を取得することを主張しました。 本件は、結局、議論が平行線をたどり、まとまらなかったため、調停は不成立となり、審判手続に移行しました。
遺産分割審判では不公平な結果になってしまい直ちに高裁に抗告した
審判手続においても双方の主張は平行線で、双方とも一歩も退かなかったことから、最終的に家裁に審判を出してもらうことになりました。 すると、家裁は、当方の主張を斥け、相手方らの主張を採用して、極めて不公平な内容の審判が出されてしまいました。 これにはさすがに温厚な依頼者も立腹し、直ちに、高裁に抗告することになりました。 高裁では、当方より様々な角度から主張を補充したところ、裁判官の示唆もあり、仮に、依頼者が相続分の放棄をする旨の意思表示をしたものと認められるとしても、その意思表示は、動機の錯誤により無効(又は取り消す)であるとの主張を補充しました。 このように、高裁において粘り強く主張・立証を補充した結果、高裁は、家裁の判断は誤りであり、仮に依頼者が相続分の放棄をする旨の意思表示をしたものと認められるとしても、その意思表示は、動機の錯誤により無効(又は取り消す)であるとの当方の主張を採用し、不動産もそれ以外の流動資産も、いずれも、依頼者を含む相続人全員で法定相続分に応じて分割すべきとの極めて公平・妥当な判断を出してもらうことができました。
担当弁護士のコメント
本件では、家裁で納得のいかない不当な審判が出されてしまったとしても、諦めずに高裁に抗告し、粘り強く主張・立証を補充することで家裁の誤った判断を覆すことができるということを経験し、依頼者にとっても大変満足のいく結果となり、私自身にとっても自信につながるものとなりました。
この記事の執筆者
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専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。
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