相手方の特別受益の有無及び持戻し免除の意思表示の有無が争点となったところ、最終的にはほぼ当方の主張を前提とした内容の調停が成立した事例

相談に至った経緯

依頼者は、80代の女性(母親)と50代の男性(息子)でした。

依頼者の夫(父親)がお亡くなりになり、相続人は、依頼者である妻と長男及び相手方である長女の3名でした。依頼者らによれば、夫(父親)が亡くなった後、長女との間で話し合いをしたが、協議がまとまらなかったため、調停の申立てをするべく当方にて受任することになりました。

争点

争点は、被相続人から相手方に対する生計の資本たる贈与、すなわち特別受益が認められるか、特別受益が認められる場合に、持戻し免除の意思表示が認められるかという点でした。

争点

そこで、私は、主張書面の中で、被相続人から相手方に対する600万円の生前贈与は生計の資本たる贈与として特別受益に当たり、そうすると、相手方は超過特別受益者として、今回の遺産分割では相続分がないことを主張しました。これに対し、相手方は、特別受益であることを否認したうえ、仮に特別受益に当たるとしても、持戻し免除の意思表示があったと主張しました。さらに、相手方は、住宅購入資金の贈与であり、「生計の資本」たる「贈与」に当たり特別受益に該当することを認めた上で、被相続人による持戻し免除の意思表示があった旨主張するに至りました。

しかし、被相続人から依頼者に対する不動産の共有持分の遺贈については、公正証書遺言において明確に持戻し免除の意思表示がなされている一方、相手方に対する特別受益については明示的な持戻し免除の意思表示がなされていないこと等に鑑みると、相手方の600万円の特別受益について、被相続人による持戻し免除の意思表示は認められない旨を主張しました。

結果

そのうえで、さらに粘り強く調整した結果、最終的には、依頼者が相手方に対して解決金として30万円を支払うことで調停成立となりました。

この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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