遺言代用信託の法的解釈が争点に。交渉と調停で早期解決し、精神的負担から解放

人間関係・遺産の全容

  • 依頼者 : 亡くなった父の長男(60代)
  • 相手方 : 亡くなった父の孫2人(依頼者の甥姪)(30代、代襲相続人)
  • 財産 : 不動産、預貯金、遺言代用信託(約2,000万円)を含め総額約4,000万円

 

依頼者の悩み・相談の背景:

亡くなった男性の遺産をめぐり、依頼者である長男と、すでに亡くなっている次男のお子さん(被相続人の孫で代襲相続人。依頼者の甥姪)2人と遺産分割協議を行いました。この段階から、双方で代理人を立てて話し合いました。

特に、長男を受取人として信託銀行に「遺言代用信託」として預けられていた2,000万円の法的な扱い(遺産分割の対象となるか否か)について意見が対立していました。相手方である被相続人のお孫さんたち(代襲相続人)は、この遺言代用信託も相続財産に含めて分割すべきだと主張しましたが、当方では、遺言代用信託の法的扱いについて確立した裁判例がないことから、受取人が指定された生命保険金と同様、遺産分割の対象ではなく、特別受益にも当たらないという見解に立ち、交渉が難航しました。このため、最終的に相手方らから遺産分割調停を申し立てられました。遺産の総額は約4,000万円で、そのうち2,000万円が遺言代用信託として長男に残されたもので、その他は、被相続人が住んでいた東北地方の実家不動産と預貯金でした。

 

提案内容

当方は、遺言代用信託は遺言による遺贈ではないため、生命保険金と同様に受取人の「固有の権利」であり、遺産分割の対象とはならないと主張しました。しかし、遺言代用信託の法的扱いについて確立した裁判例はないものの、相手方からは、遺言代用信託の法的扱いについて、遺言に極めて類似する性質をもつため、遺贈に準じて特別受益に当たるとの学説を紹介され、その結果、調停の場では裁判所から「遺贈に準じて特別受益に当たると考える」との見解が示されました。

当方としては不服ではありましたが、裁判所の見解ですので、特別受益であることは認めることにしました。しかし、相手方らは、依頼者が既に取得した遺言代用信託について、依頼者の本来の相続分を超過する金額についても返還するよう主張したので、その点については、民法の規定に基づき、依頼者が既に取得した超過分を相手方に返還する法的根拠はないと反論しました。相手方からは法的根拠の不明な主張とともに、使途不明金の返還についても主張され、感情的な対立が続いていましたが、依頼者が早期解決を強く希望されていたため、遺言代用信託以外の遺産は相手方がすべて取得したうえ、依頼者から相手方らに対し、解決金として、それぞれ50万円ずつ計100万円を支払うことで、調停を成立させました。

結果として、依頼者は、遺言代用信託の超過特別受益分を返還することなく、解決金として合計100万円を支払うことで、調停が成立しました。

 

弁護士からのひとこと

遺言代用信託のような新しい金融商品は、その法的な取扱いがまだ不明確な場合があります。遺産にこれらの金融商品が含まれる場合、弁護士への相談は不可欠です。

今回の事例では、裁判所において、遺言代用信託が遺贈に準じて特別受益と判断されたものの、法定相続分の超過分の返還義務はないという当方の主張が通り、依頼者の最低限の利益を守ることができました。依頼者の早期解決の意向も強かったため、解決金を支払うことでスピーディーに事件が終了しました。

遺産に遺言代用信託や複雑な金融商品が含まれ、その扱いに不安がある方は、ぜひ弁護士にご相談ください。

この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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