家庭裁判所で却下された特別縁故者への相続財産分与の申立てが、東京高等裁判所への即時抗告により認められ、相続財産の約4分の1に相当する3000万円の分与を受けた事例

ご相談の背景
ご相談者のAさん(60代・女性)は、いとこのBさん(60代・男性)が急逝されたことを受けて、当事務所にご相談にいらっしゃいました。Bさんは生涯独身で子どもがなく、ご両親はすでに他界され、兄弟姉妹もいなかったため、相続人が一人もいない「相続人不存在」の状態でした。
Aさんは、Bさんにとって最も身近な親族として、幼少期から家族ぐるみで親しく交流し、Bさんのご両親の入院の付添いや葬儀を手伝い、Bさんのお母様が亡くなられた際には、動揺するBさんに代わって葬儀の段取りや親戚への連絡を取り仕切るなど、長年にわたりBさん一家を物心両面で支えてこられました。Bさんが倒れて入院された際にも、行政からの依頼を受けて連絡窓口を引き受け、入院費用等を立て替え、Bさんが亡くなられた後は、喪主として葬儀を執り行い、墓じまいや永代供養の費用まで負担されていました。
そこで、Aさんは、立て替えた費用の精算と、特別縁故者としての相続財産の分与を求めたいとのことで、当事務所に手続を依頼されました。当事務所では、まず家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てた上で、特別縁故者に対する相続財産分与の審判を申し立てました。
本件の難しかったポイント
特別縁故者に対する相続財産の分与(民法958条の2)は、「被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者その他被相続人と特別の縁故があった者」に認められる制度ですが、単に親族(いとこ)であるというだけでは認められず、その該当性の判断は裁判所の裁量に委ねられているため、一般にハードルの高い手続といわれています。
本件では、AさんがBさんと生計を同じくしていたわけではなく、生前に継続的な経済的援助をしていたという事情もなかったこと、長年の交流の中には客観的な裏付け証拠のない事実も含まれていたことから、相続財産清算人からは、Aさんは特別縁故者に該当しないとの意見が提出されました。
当事務所では、過去の裁判例を詳細に分析した主張補充書面を複数回提出し、同種の事案の審判例(被相続人のいとこに相続財産の4分の1相当額の分与を認めた審判例)も証拠として提出して反論しましたが、家庭裁判所は、Aさんの申立てを却下する審判を下しました。ここからいかにして逆転を勝ち取るかが、最大のポイントとなりました。
当事務所が行った対応
当事務所では、申立ての段階から、Aさんへの丁寧な聴き取りに基づき、幼少期から約半世紀に及ぶBさんとの交流、Bさんのご両親の看護・葬儀への関与、Bさんの入院時の対応や費用負担、喪主としての葬儀の主宰、墓じまい・永代供養等の祭祀の承継に至るまで、事実経過を時系列に沿って詳細に主張するとともに、Aさん作成の陳述書2通や領収証等の書証を提出して立証を尽くしました。
また、相続財産清算人の否定的な意見に対しては、経済的援助がない事案や交流の程度が必ずしも濃密とはいえない事案においても、死後の葬儀・法要等への尽力や故人の生前の意思を考慮して、家庭裁判所の却下審判を取り消し、特別縁故者への分与を認めた複数の高等裁判所の裁判例を引用・分析し、特別縁故者該当性を厳格に解しすぎるべきではないことを粘り強く主張しました。
家庭裁判所の却下審判に対しては、直ちに東京高等裁判所に即時抗告を申し立て、原審判の判断の問題点を丁寧に指摘した抗告理由書を提出するとともに、Aさんの主張を裏付ける書証を追加で提出し、主張・立証をさらに補強しました。
高裁の判断と解決結果
東京高等裁判所は、即時抗告の申立てから約3か月後、家庭裁判所の却下審判を取り消した上で、Aさんを特別縁故者と認め、相続財産の約4分の1に相当する3000万円をAさんに分与する決定を出しました。
これにより、Aさんは、立て替えた入院費用や葬儀費用等を大きく上回る相続財産の分与を受けることができ、Bさんとの長年の縁故と献身が正当に評価される結果となりました。
担当弁護士のコメント
特別縁故者に対する相続財産分与の申立ては、認められるためのハードルが高く、本件のように相続財産清算人から否定的な意見が出され、家庭裁判所で却下されてしまうケースも少なくありません。しかし、家庭裁判所の審判が出ても、それで終わりではありません。本件では、即時抗告審において、過去の裁判例の分析に基づく緻密な主張と追加の立証を重ねた結果、東京高等裁判所が当方の主張を正面から受け止め、原審判を取り消して3000万円の分与を認める決定を出してくれました。諦めずに粘り強く主張・立証を尽くすことの大切さを改めて実感するとともに、記録を丹念に検討して適切な判断を示してくださった高裁の裁判官に敬意を表したいと思います。
近時、生涯独身の方や子どものいない方が増え、相続人のいない「おひとりさま」の相続は、今後ますます増加することが見込まれます。親族の入院費用や葬儀費用を負担された方、長年身近で故人を支えてこられた方は、特別縁故者として相続財産の分与を受けられる可能性があります。
当事務所では、相続財産清算人の選任申立てから特別縁故者に相続財産分与の申立て、即時抗告に至るまで一貫して対応いたしますので、お心当たりのある方は、どうぞお早めにご相談ください。
この記事の執筆者
- 弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
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専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。
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