相続の悩みは、誰にどのタイミングで相談すべき?相続の相談を弁護士にする理由
3士業別、相続における得意分野と依頼すべき内容
相続案件を扱っているのは弁護士だけではなく、弁護士以外の他の士業も扱っています。このため、皆様の中には、費用が弁護士より安い、弁護士より敷居が低い、相続人間に争いがないなどの理由で、行政書士など、弁護士以外の士業の方々に相続案件を依頼される方もいらっしゃいます。
しかし、最初は相続人間に争いがないと思っていても、話し合いが進むにつれて、紛争が顕在化することはよくあることです。
そうすると、紛争案件を扱うことができるのは、「弁護士法72条」により、法律事務の専門家である弁護士のみと定められていますので、あとから紛争が顕在化すると、上記の事例のように、途中で、弁護士に依頼し直さなければならなくなることも決して少なくありません。
司法書士に依頼すべき業務:不動産登記の問題
司法書士は、不動産の名義変更(相続登記)の専門家です。相続において多く発生する相続登記は、登記にあたり専門的な知識と実務経験が必要であるため、司法書士への依頼がおすすめです。以下のケースに該当する場合は、司法書士に依頼するのが最適でしょう。
・遺産の中に不動産があり、相続登記(不動産の名義変更)が必要なとき
・相続放棄の書類作成代行
税理士に依頼すべき業務:相続税をはじめとした税金申告全般
税理士は、税申告を専門分野とする士業です。相続において、多く発生する税問題は相続税になります。以下のケースに該当する場合は、税理士に依頼するのが最適でしょう。
・遺産額がかなり大きく、相続税を申告しなければならないかもしれないとき
弁護士に依頼すべき業務:法律問題全般
弁護士は、法律問題全般を得意とする士業です。一番の特徴としては、依頼者の「代理人」になることが可能である点です。特に、相続人の間で揉めてトラブルになってしまった場合において、弁護士に依頼することで円滑に相続手続を進めることができます。
以下のケースに該当する場合は、弁護士に依頼するのが最適でしょう。
・遺産分割協議がうまく進まないとき
・納得のいかない遺言があるとき
・遺言があって、遺留分の請求をしたいとき
・相続人が多い場合や行方不明者、認知症の相続人がいる場合
・遺産の使い込みの疑いがある場合
次の表は、各士業の業務領域をまとめたものです。
項 目 |
弁護士 |
司法書士 |
税理士 |
行政書士 |
相続調査 |
○ |
○ |
○ |
○ |
遺産分割協議書作成 |
○ |
△ |
△ |
△ |
代理人として交渉 |
○ |
× |
× |
× |
調停の代理 |
○ |
× |
× |
× |
審判・訴訟の代理 |
○ |
× |
× |
× |
相続登記 |
○ |
○ |
× |
× |
相続税申告 |
× |
× |
○ |
× |
※△=相続人間での話し合いで確定している内容を書面化することはできるが、紛争性のある案件に関与することは不可
相続の相談はいつ依頼するのがベストなタイミング?
結論から申し上げると、早ければ早い方が良いです。
とは言っても具体的に出る影響や期日などがあるものを知りたいという方は多いかと思います。期日で分けると、法律で期限が定められているものと定められていないものの早く行った方が良い手続きの大きく2種類に分かれます。
依頼すべきタイミングとその手続きの概要
・法律で期限が定められている手続
①相続放棄・限定承認(3か月以内)
②所得税の準確定申告(4か月以内)
③相続税の申告(10か月以内)
④相続登記(※法改正で3年以内になる予定)
・定められていないものの早く行った方が良い手続き
①遺産分割協議
②分割協議成立後の遺産整理手続(ただし、相続登記は前述のとおり)
解決事例
実際に期限を越してしまった相談者の事例
①相続放棄の3か月の熟慮期間を徒過してしまった事例
→もはや相続放棄ができないため、負債も含めて相続するしかなくなってしまう。
②相続税の申告期限を徒過してしまった事例
→これは以前依頼していた弁護士が相続税の申告に必要な書類を預かったまま連絡が取れなくなってしまったことが原因であったため、依頼者が納付を余儀なくされた無申告加算税や重加算税について、当該弁護士に対して損害賠償請求訴訟を起こして勝訴し、賠償金の支払いを受けた。
相続問題に関して不安がある方は専門家である弁護士に相談を
相続においては、相手との話し合いが上手く進まない方や話し合い自体に応じてくれないといったケースでご相談にいらっしゃる方が多いです。
弁護士に依頼することで、今抱えていらっしゃる不安や不満に感じている内容を解決できる可能性があります。専門知識を活かして、ご相談様のご希望に添えるようサポートさせていただきますので、一度当事務所にお気軽にお問い合わせください。
この記事の執筆者
-
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。
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