配偶者なしの相続人が亡くなった場合、法定相続人は誰になる?

女性高齢者単身世帯や生涯未婚率が増加傾向にあるというニュースがよく聞かれるようになりました。

実際に2015年の統計データでは、生涯未婚率も男性は23%、離婚率は約35%、単身世帯も約35%にのぼり、配偶者がいない家庭が多いことが窺えます。

独身でいる理由には、ライフタイルの多様化や親の介護、死別、晩婚化、経済的な問題など様々ですが、どんな状況でも避けて通れないのが相続です。

「配偶者も子どもいないのだから、自分が死んだときには誰にも迷惑をかけないから大丈夫だろう」と思われる方もいらっしゃると思います。

しかし、財産の大きさにかかわらず配偶者のいない方もご自身の相続にはしっかりとした準備が必要です。

本記事では、配偶者がいない方の相続について具体的にご説明していきます。

相続開始時に配偶者なしの場合、配偶者以外の家族状況で相続人が決まる

相続開始の時に配偶者がいない場合には、配偶者以外のご家族がどのような状況なのかによって相続人が決まります。独身であればお子さんはいらっしゃらないので、ご自身のご兄弟がどうなのか、離婚していれば、元配偶者の方との間のお子さんはどうかなど、相続人となりうる方がいらっしゃればその方が相続人となります。

(1)相続人となりうる方を探す

本籍地の役所へ行き、ご自身の出生から現在までの連続した戸籍がすべて集まるように順を追って調べていきます。本籍地が遠い場合や忙しい場合には、少しお時間がかかりますが、郵送にて取り寄せることも可能です。すべての戸籍が揃えば、戸籍から誰が法定相続人となるのかを確認することができます。

本籍地を移動していなければ、請求する役所は1か所で済むこともあります。

ごく稀にある話として、ご自身のご両親が再婚された事実を知らず、実は相続人となるごきょうだいがいらっしゃるということがあります。特に独身の方やお子さんがいらっしゃらない方は、生前にご自身の戸籍情報を確認されることをお勧めします。

(2)相続人と相続割合の確定方法

戸籍上の関係が明確になれば、そのあとは相続順位のルールに基づいて法定相続人が決まります。生前に相続人を確認されている場合には、その後のご家族の状況により変化することを意識しておきます。

配偶者がいなくても、相続順位に沿って決めていけば法定相続人が決まるということです。

法定相続人の優先順位は、

①お子さん・お孫さん

②ご両親・祖父母

③ご自身のご兄弟

の順になります。

配偶者がいない場合の具体的な相続人の4つのケース

配偶者がいない場合の法定相続人の考え方は、具体的には4つのケースがあります。

相続順位が上位の方がいらっしゃる場合には、その方が相続人となるため、それ以降の順位の方は相続人にはなれません。

また、配偶者がいない場合の相続割合は、該当順位の方が100%となるため、該当する相続人の人数で割ります。例えばお子さん二人だけであれば、50%ずつです。

(1)配偶者なし/子あり

配偶者なしの場合で、相続順位が1位となるお子さんがいらっしゃる場合の考え方です。
離婚したケースが最も当てはまります。
この場合はお子さまが財産を全て相続することになります。お子さまがお二人いればそれぞれ1/2ずつ財産を引き継ぎます。

 

(2)配偶者なし/子なし/親あり

配偶者なしで、お子さんもなし、ご両親がご健在の場合です。
生涯独身の場合や、離婚した相手との間にお子さんがいらっしゃらない場合です。
この場合はご両親が財産を全て相続することになります。ご両親がお二人ともご健在であればそれぞれ1/2ずつ財産を引き継ぎます。

 

(3)配偶者なし/子なし/親なし/きょうだいあり

配偶者なしで、お子さんもなし、ご両親がすでに亡くなられており、ご自身のごきょうだいがいる場合です。
上の(2)のケースでご両親が亡くなられていらっしゃらない場合です。
この場合はご自身のごきょうだいが財産を全て相続することになります。ごきょうだいがご自身以外にお一人であれば、すべての財産を相続することになります。

 

(4)配偶者なし/子なし/親なし/きょうだいなし

(1)~(3)にあったようなケースは、ご家族内に相続人がいらっしゃいますので安心です。
しかし、ご自身が高齢になってくると、相続人に該当する方が誰もいないという事態に直面することもあります。
このような場合には、「特別縁故者」がいらっしゃればその方が、いらっしゃらなければその財産、最終的には国のものとなります。

①「特別縁故者」がいれば相続財産を取得できる

「特別縁故者」とは、相続人が誰もいない場合に特別に財産を引き継ぐことができる相続人以外の方です。
「特別縁故者」と認められるには条件があり、

・亡くなられた方と生計を同じくしていた方
・亡くなられた方の介護などの世話をした方、
・亡くなられた方との特別な縁故(師弟関係や親子同然など)があった方

などとなります。

特別縁故者として財産を引き継ぐことを希望する方が、家庭裁判所へ自ら申し立てて、認められれば財産を引き継ぐことができます。

②「特別縁故者」もいなければ国庫に帰属する

相続人が誰もおらず、「特別縁故者」もいない場合には、最終的に財産は国庫に帰属することになります。つまり国のものになってしまいます。

財産が一目でわかる財産目録を作成しておく

配偶者がいない場合、相続人となる方が財産の全容をつかめないケースがあります。

そこで、ご自身が所有している財産の目録を作成しておきましょう。生前に財産目録を作成しておくことは法的なルールや義務ではありませんが、ご自身が亡くなられた後に相続する方が困らないようにするために作成をお勧めします。

(1)財産目録の作成方法を確認する

財産目録を作成する場合には、具体的な住所や口座番号が書かれているなど、誰が見ても分かりやすいものにしましょう。土地、建物などの不動産や現金、預金など種類別に書いておくとわかりやすいです。

(2)マイナスの財産も分かるようにしておく

財産目録にはプラスの財産だけではなく、債務などマイナスの財産もしっかりと明記しておきましょう。

特に、プラスの財産よりマイナスの財産の方が多い場合、マイナスの財産も全て目録に記されていれば、相続人となる方は相続放棄を選択することができます。相続放棄の申請期限は相続開始後3か月しかありませんので、迷惑をかけないためにもしっかりと記載しましょう。

(3)葬儀やお墓の希望なども記しておく

財産の目録に加えて、ご自身が希望される葬儀やお墓、亡くなられた後のお部屋の片付けに関することなども記しておくとよいでしょう。亡くなられた方の遺志を尊重することが一般的です。

 

贈与や遺言書で希望をかなえる方法もある

配偶者もお子さんもいらっしゃらない場合には、ご自身の財産はご自身の意志で誰かに引き継いでもらうことも一つの選択肢です。法定相続人以外の方に財産を引き継いでもらう場合には、生前贈与又は遺言書による遺贈が一般的です。

(1)生前にある程度の財産を贈与する

生前に相続の対象となる財産を徐々に相続人となる方へ贈与をしておくこともできます。1年に110万円超の贈与については贈与税が発生しますが、生前贈与をしておけば確実に財産を引き継ぐことができます。

(2)死因贈与(契約)で相続人以外に財産を引き継ぐ

死因贈与(契約)は、「亡くなられる前、ご本人が、自身が亡くなった後に財産を引き継ぐ相手に財産を渡すことを伝えておく契約」のことをいいます。遺言書等に明記する決まりはないのですが、亡くなられた後に効力が発生する契約となりますので、のちに契約の成立を証明するためにも、きちんと書面を作成しておくことが重要です。

(3)遺言書を作成して遺贈する

遺言書を作成しておき、亡くなられたあとに遺言書の効力で財産を承継させる方法もあります。生前に贈与を済ませておいた方が安心ではありますが、亡くなられた後に遺言書に沿って相続手続を進めていただく工夫も良いかと思います。

注意点としては、遺言の内容が間違っていると無効になることがありますので、遺言書は、公証役場で公証人に公正証書遺言として作成してもらうことをお勧めいたします。

 

まとめ

相続人に配偶者がいない場合、ご自身が思っていた方へ確実に相続されるよう、他に相続人がいないか確認しておきましょう。あわせて財産をしっかりと確認し、目録を作成しておきましょう。

その上で、どのように財産を分けるのか考え、確実に財産を相続してもらうためには、公正証書で遺言書を作成しておくことをお勧めいたします。

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この記事の執筆者

加藤 剛毅弁護士 元さいたま家庭裁判所家事調停官
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。

家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。

家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。

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