生命保険金に対して遺留分請求はできますか?
Q. 他の相続人が受領した生命保険金についても遺留分の請求をすることはできますか。
原則としてできません。
1. 遺留分と生命保険金の関係
死亡による生命保険金については、特定の相続人を受取人にしていた場合には、当該保険金を受領する権利は受取人固有の権利であり、遺産には含まれないとされています(保険証券等をみることにより実際の関係はわかりますが、通常、生命保険の場合には特定の相続人を受取人にしてある場合が多いです)。
そのため、生命保険金は、通常、遺留分の計算の基礎となる財産には含まないとされています。
2. 特別受益と生命保険金の関係
特定の相続人のみが生命保険金を受領する場合、他の相続人との間において不公平となるときもあります。
そのため、「相続人間の不公平が到底容認できないほど著しいものと評価すべき特段の事情」がある場合には、遺留分の基礎となる財産に生命保険金も含めて計算をするものとされています。
このような場合には、特別受益があることに準じると評価されるのがその理由です。
3. 具体的な判断基準
具体的な判断基準としては、主に、「受け取った保険金の額」と「遺産総額」との比率を計算して、不公平が到底容認できないほど著しいかどうかを判断します。その他の事情としては以下のような事情を考慮します。
・同居の有無
・介護等の貢献の度合いなど、保険金受取人である相続人とその他の相続人との関係
・各相続人の生活実態
4. 実際の争い方
生命保険金のみに対して遺留分侵害額請求をするような場合には、失敗すると請求自体が全く認められないという結論になってしまいます。その場合には時間と手間と費用をかけた意味が全くなくなってしまいます。
この場合、生命保険金以外の財産も含めて遺留分侵害額請求をする中で、生命保険金も遺留分侵害額請求の対象とすべきであるという争い方をするのが適切です。このような争い方であれば、裁判所の調停手続などにおいて、柔軟な話し合いを行うことができます。
その上で、適切な水準での和解を目指すということが現実的かつ効果的な争い方といえるでしょう。
弁護士による相続の相談実施中!
武蔵野経営法律事務所では、初回相談は60分無料となっております。
「遺産相続でトラブルになってしまった」
「不安なので相続手続をお任せしたい」
「子どもを困らせないために生前対策をしたい」
などのニーズに、相続案件に特化した弁護士がお応えいたします。
お気軽にご相談ください。
電話での相談予約は、04-2936-8666にお電話ください
当事務所の相続問題解決の特徴
当事務所でよくご相談いただくサービスメニュー
当事務所に寄せられるQ&A
この記事の執筆者
-
専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。
最新の投稿
相続Q&Aの最新記事
- 内縁の妻と夫の相続はどうなる?事実婚でも財産を引き継ぐ方法を解説
- 相続の悩みは、誰にどのタイミングで相談すべき?相続の相談を弁護士にする理由
- 相続で相手方が弁護士を代理人に立ててきた場合の注意事項
- 遺産分割調停を申し立てするためにどのような準備が必要か?
- 親の土地の上に家を建てて住んでいるのは特別受益?
- 遺産分割がまだ終わっていない!相続税の申告期限に間に合わないときの対処法は?
- 相続放棄しても生命保険金は受け取れるの?
- 亡くなった親の預貯金、すぐに引き出すことは可能ですか?
- 遺産分割協議に応じてもらえない!そんなときどうしたら良いの?
- 配偶者なしの相続人が亡くなった場合、法定相続人は誰になる?
- 遺産分割協議書を偽造するとどうなる?
- 遺言書でトラブルを避けるために注意すべき点は?
- 相続人が行方不明の場合はどうすればいいか?
- 遺産分割協議書の内容を守らない相続人がいる場合の対処法は?
- 財産目当てで高齢の親を「囲い込み」…親族との面会妨害はやった者勝ち?
- 遺言書の書き直しは可能ですか?
- 遺言書の偽造が疑われる場合にはどうすればいいのでしょうか?
- 持戻し免除の意思表示とは何ですか?どういうケースで認められますか?
- 相続財産が隠されている可能性がある場合にはどうすればいいのか?
- 第三者が遺贈や死因贈与を受けた場合、相続人と遺産分割協議をする必要はあるのでしょうか?
- 家族の中に養子がいる場合、その人に相続分はあるのでしょうか?
- 亡父から何十年も前に「勘当」された兄は遺産分割協議に含めなくて良いのでしょうか?
- 腹違いの兄弟の相続はどうなる?異母兄弟の相続について
- 海外に相続人がいる場合の遺産分割で気を付ける点はありますか?
- 遺産分割協議等が無効になる場合はありますか?
- 介護の寄与分を認めてもらうための証拠とはどのようなもの?
- 相続人全員が相続放棄をしましたが、この場合、放棄された不動産は放置しても大丈夫でしょうか?
- 前妻の子は相続できるでしょうか?
- 内縁の妻は相続できますか?
- 大昔に亡くなった方の遺産分割をしていなかったのですが、今からでも遺産分割をするべきでしょうか?
- 祭祀財産(墓地、仏壇、位牌など)は遺産分割の対象となりますか?
- 代襲相続ができるケースについて教えてください。
- 動産(衣服、写真、自動車、芸術品など)の財産の評価はどうなりますか?
- 遺産分割調停の時点で弁護士を依頼すべきでしょうか?
- 遺産分割で、借金やローンなどの債務はどう扱えばいいでしょうか?
- 寄与行為の種類と具体例について教えてください。
- 遺留分の請求には期限があると聞いたのですが具体的に教えてください。
- 遺産分割調停を欠席した場合の、相続におけるデメリットはありますか?
- 特別受益の対象となる例を教えてください。
- 遺産分割を放置するとどうなりますか?
- 不動産の相続手続の注意点を教えてください。
- 相続人の一部に未成年者がいる場合に気を付けるポイントはありますか?
- どうしても相続させたくない相続人(子どもや兄弟など)がいる場合にはどうすればよいでしょうか?