相続財産が隠されている可能性がある場合にはどうすればいいのか?
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兄が遺産を隠している可能性がある?
兄弟で父や母の遺産を相続した場合、親と同居していた長男などが親の預貯金などの遺産隠しをするケースがあります。
そのようなとき、兄は「親の遺産はこれだけだ」と言って一部の預貯金のみ開示するか、あるいは、一切開示に応じないケースなどもありますので、他の相続人は到底納得できません。
このように被相続人と同居していた相続人が遺産隠しをしたとき、他の相続人が隠された財産を探す方法はあるのでしょうか?
遺産隠しが行われたとき、特別な方法で一挙にすべての相続財産を網羅的に探す方法はありません。基本的には、相続人ご自身が、土地建物などの不動産、預貯金、株式などの有価証券など、個別の相続財産を根気よく探していく必要があります。
遺産隠しが疑われる場合、相続財産はどのように見つけるのか?
遺産隠しが疑われる場合、具体的にどうやって隠された遺産を探せば良いのかご説明いたします。
(1)不動産の調査方法
不動産については、市町村から送られてくる固定資産税の納付書等を頼りに、被相続人の最後の住所地近辺の自治体に「名寄帳」を請求して取り寄せれば、ほとんど漏れなく把握することができます。
(2)預貯金の調査方法
次に、預貯金についてですが、被相続人の最後の住所地近隣にある全ての金融機関の支店に照会をかければ、概ね把握することができます。
もっとも、被相続人が最後の住所地から遠方の金融機関の支店に預金口座を保有していたような場合には、その存在を正確に把握することができない場合があります。
(3)株式などの有価証券の調査方法
また、株式等の有価証券を保有していた場合も、被相続人が利用していた証券会社に照会をかければ概ね判明しますが、これにも、限界があります。
このように、相続財産の調査にはおのずと限界がありますが、被相続人が亡くなったあと、被相続人名義の預貯金口座や有価証券を被相続人名義のままにしておくと、それらを利用することはできませんので、通常は、それらの存在を把握している相続人が自らその存在を申告し、遺産分割の対象とすることになります。
とはいえ、たとえば、特定の相続人が、被相続人がお亡くなりになる直前に被相続人名義の預貯金口座から多額の金銭を引き出して当該口座を解約してしまったような場合には、当該相続人がその存在を隠すこともあります。
実際に、このような場合で、相続財産調査により被相続人の生前に多額の金銭が引き出されていたことが判明した事例もあります。
相続財産(預貯金)を自分で調査する方法と弁護士へ依頼するメリット
被相続人名義の預貯金が隠されたときに、相続人が自分で調べる場合と弁護士に依頼する場合との違いをみてみましょう。
(1)隠された預貯金を調べる方法
相続財産調査で預貯金を調べるには、前述のとおり、被相続人の預貯金口座がある銀行や信用金庫などの金融機関を特定する必要があります。自宅の近くや被相続人が頻繁に出入りしていた銀行、郵便が届いている金融機関などにあたりをつけましょう。
そして、戸籍謄本や運転免許証などの本人確認書類、相続関係説明図や印鑑などの必要書類や必要物を持って該当の金融機関に行きます。二度手間にならないよう、事前にどういう資料が必要か確認しておきましょう。
銀行に行ったら、被相続人が死亡した日にちの「残高証明書」や被相続人の死亡前後の一定期間の「取引明細書」を発行してもらいます。
残高証明書はその日1日分のみの残高がわかるもの、取引明細書は数か月~数年(一般的には、最長で過去10年分まで遡ることができるとされています)にわたる入出金の明細がわかるものです。
この作業をすべての心当たりの金融機関で行う必要があります。
(2)弁護士へ依頼するメリット
遺産隠しが行われたときの相続財産調査を弁護士に依頼することも可能です。
弁護士が対応する場合にも、具体的な方法は、基本的に相続人ご自身が調べる場合と同じです。弁護士などの専門家でも全国の金融機関を一挙に調べることはできず、個別の金融機関に照会をかけて、粘り強く開示を求め続ける必要があります。
もっとも、弁護士に依頼すると、弁護士が、相続人に代わって必要な作業をすべて行うので、相続人ご自身は必要書類を集めて金融機関に足を運ぶ必要がなく、多大な労力や時間を省くことが可能です。
また、弁護士が開示された資料・相続財産の内容を報告書の形にまとめますので、情報が整理されます。
さらに、不自然かつ多額の出金などがあれば、弁護士が見つけて指摘することもできますので、相手方による使い込みが判明するケースもあります。
遺産分割協議成立後に遺産隠しが分かった場合の対応方法
相続人同士で遺産分割協議をしていたときには遺産隠しが明らかになっておらず、協議成立後に「遺産隠しがあったのではないか?」と疑われるケースもあります。
その場合、遺産分割協議のやり直しができるのか、注意点も含めて解説していきます。
(1)遺産分割のやり直しは可能
まず、遺産隠しが発覚したときに遺産分割協議のやり直し自体は可能です。いったん成立した遺産分割協議をやり直せるのは、以下のような場合です。
●法定相続人全員が合意してやり直す
遺産分割協議に参加する資格のある法定相続人全員が「やり直し」に納得して、遺産分割協議を合意解除すれば、遺産分割協議をやり直せます。
●詐欺や強迫があった
特定の相続人や第三者による詐欺や強迫があった場合にも遺産分割協議を取り消すことができます。
たとえば、遺言書があるのに隠されていた場合や預貯金などの相続財産を隠されていた場合などは、詐欺に該当する可能性があります。
●錯誤取消し
遺産分割協議の成立後に遺言書が発見された場合や、遺産隠しのせいで預貯金が存在しないと誤解していた場合などには、錯誤取消しを主張して遺産分割協議をやり直させることが可能な場合もあります。
(2)弁護士に依頼して訴訟を起こす
遺産隠しが行われて遺産分割協議が成立してしまった場合、まずは合意によって遺産分割協議をやり直す方法を検討します。しかし、遺産隠しをしていた相続人は、通常、やり直しに同意しないでしょう。
かといって、詐欺や錯誤取消しを主張しても、相手方は「詐欺や錯誤などなかった」と主張することが多いので、なかなか話し合いでは解決できません。
そのような場合に、遺産分割協議をやり直して隠された預貯金を取り戻すには、弁護士に依頼して、裁判所で遺産分割協議の無効を確認する調停や訴訟を起こす必要があります。
訴訟等で遺産分割協議の無効が認められたら、再度、他の相続人全員と話し合いをして遺産分割をやり直すことが可能となります。
遺産隠しが行われたときに不利益を被らないように適切に進めていくには、相続問題に詳しい弁護士にご相談・ご依頼することが必須でしょう。
まとめ
相続開始後は、速やかに預貯金などの相続財産調査をする必要があります。
とりわけ、他の相続人が遺産隠しをしている可能性が疑われるのであれば、できるだけ早く弁護士にご相談されることをお勧めいたします。
少しでも疑問や不安をお持ちの方は、是非、一度お気軽にご相談ください。
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この記事の執筆者
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専門分野:相続、不動産、企業法務
経歴:埼玉県立熊谷高校から早稲田大学法学部に進学。卒業後、平成16年に弁護士登録。平成21年に地元である埼玉に弁護士会の登録替え。平成26年10月より、最高裁判所よりさいたま家庭裁判所の家事調停官(いわゆる非常勤裁判官)に任命され、4年間にわたり、週に1日、さいたま家庭裁判所に家事調停官として勤務し、数多くの相続事件を担当。平成30年5月に武蔵野経営法律事務所を開業し、現在に至る。
家事調停官の経験を活かし、相続事件の依頼者にとって最適な解決に導くサポートを実施している。
家事調停官時代の件数を含めて、相続事件の解決実績は500件以上に上り、地域内でも有数の実績である。
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